水酸化カリウム(読み)スイサンカカリウム(英語表記)potassium hydroxide

デジタル大辞泉 「水酸化カリウム」の意味・読み・例文・類語

すいさんか‐カリウム〔スイサンクワ‐〕【水酸化カリウム】

塩化カリウム水溶液を電解して作られる潮解性の白色固体。水によく溶け、水溶液は強アルカリ性。固体および濃水溶液は腐食性が強い。劇薬。カリガラス軟石鹸なんせっけん・染料・アルカリ電池製造などに使用。苛性かせいカリ。化学式KOH

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精選版 日本国語大辞典 「水酸化カリウム」の意味・読み・例文・類語

すいさんか‐カリウムスイサンクヮ‥【水酸化カリウム】

  1. 〘 名詞 〙 ( カリウムは[ドイツ語] Kalium ) カリウムの水酸化物。化学式 KOH 常温で白色。単斜晶系結晶のα(アルファ)型と、高温で等軸晶系に転移したβ(ベータ)型の二つの変態がある。水溶液は強アルカリ性で腐食性が強い。劇薬。カリウム塩・カリ石鹸などの製造、染料の合成、二酸化炭素の吸収剤、分析試薬、アルカリ電池などに用いられる。苛性カリ。カリ。ポッタース。

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改訂新版 世界大百科事典 「水酸化カリウム」の意味・わかりやすい解説

水酸化カリウム (すいさんかカリウム)
potassium hydroxide

化学式KOH。工業用あるいは俗称として苛性(かせい)カリcaustic potashともいう。

潮解性の強い無色の固体。室温では水酸化ナトリウムと同形の斜方晶系α型,高温では岩塩型立方晶系のβ型。転移温度248℃。融点360.4℃。沸点1320~1324℃。比重2.05(25℃)。融解熱1.80kcal/mol。生成熱102.7kcal/mol。反磁性で磁化率-0.590×10⁻6emu。水に溶けるとき多量の熱を発生する。水100gへの溶解度は97g(0℃),112g(20℃),178g(100℃)。28℃でメチルアルコール100cm3に40.3g,エチルアルコール100cm3に29.0g溶ける。グリセリンに易溶,エーテル,液体アンモニアに不溶。水溶液は強いアルカリ性を示し,水酸化ナトリウムよりさらに腐食性が強い。二酸化炭素をよく吸収し,生成した炭酸カリウムが水酸化カリウム濃厚水溶液によく溶けるので,CO2吸収剤としては水酸化ナトリウムより優れている。1,2,4水和物が存在し,融点は無水和物に比べて著しく低く,それぞれ143℃,35.5℃,-32.7℃で,3者の転移温度は32.5℃,-33℃である。

塩化カリウムの電気分解(隔膜法または水銀法),または炭酸カリウムの苛性化による。精製には,エチルアルコールに溶かし,不純物沈殿をろ(濾)別したのちエトキシドとし,これを減圧加熱によって分解する。水酸化ナトリウムより脱水が困難なため,市販品の最高純度は85~86%である。カリウム塩,カリセッケン,カリガラス,染料,テレフタル酸などの合成繊維原料の製造,分析試薬,二酸化炭素吸収剤,乾燥剤,有機合成試薬などに用いられる。

 取扱上の注意は水酸化ナトリウムに同じ。
水酸化ナトリウム
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「水酸化カリウム」の意味・わかりやすい解説

水酸化カリウム
すいさんかかりうむ
potassium hydroxide

カリウムの水酸化物。カ性カリcaustic potashともいう。カ性とは「皮膚を侵す」の意である。古くは炭酸カリウムを水酸化カルシウムで複分解する方法(カ性化法)で製造されたが、今日では塩化ナトリウムから水酸化ナトリウムを製造するのと同様に、塩化カリウム水溶液を電解する方法が用いられる。この場合、黒鉛陽極と鉄陰極をアスベスト製有孔膜で隔離して行う隔膜法と、水銀陰極を用いる水銀法とがある。製品の純度は水銀法のほうが高い。市販品は普通半球形の錠剤または棒状に成形されている。

 無色、斜方晶系の結晶で、水酸化ナトリウムと同型の構造をとるが、248℃以上では立方(等軸)晶系に転移し、塩化ナトリウム型となる。潮解性で、空気中に放置すると湿気を吸って溶け、二酸化炭素を吸収して炭酸カリウムとなる。水に溶けるとき多量の熱を発する。水溶液は強いアルカリ性を示す。アルコール類にもよく溶け、その溶液は各種の反応に用いられる。水酸化カリウムは水酸化ナトリウムとよく似た化学的性質をもつが、一般にそれよりも激しい。一、二および四水和物も知られている。

 各種カリウム化合物、カリガラス、軟せっけん、染料(インジゴなど)、合成繊維原料(テレフタル酸など)などの製造に用いられるほか、アルカリ電池、分析試薬、二酸化炭素吸収剤などに用いられる。劇薬(許容濃度1立方メートル当り2ミリグラム)なので、取扱いには水酸化ナトリウムと同様、密栓して保存するなど注意が必要である。

[鳥居泰男]


水酸化カリウム(データノート)
すいさんかかりうむでーたのーと

水酸化カリウム
  KOH
 式量  56.1
 融点  360.4±0.7℃
 沸点  1320~1324℃
 比重  2.05(測定温度25℃)
 結晶系 斜方
 溶解度 112g/100g(水20℃)
     40.3g/100cm3(メタノール28℃)

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化学辞典 第2版 「水酸化カリウム」の解説

水酸化カリウム
スイサンカカリウム
potassium hydroxide

KOH(56.11).カセイカリともいう.塩化カリウム水溶液を隔膜を用いて電解すると陰極室に得られる.無色半透明の固体.常温では斜方晶系で水酸化ナトリウムと同型.248 ℃ で等軸晶系岩塩型構造のβ形に転移する.密度2.05 g cm-3.融点360.4 ℃,沸点1320 ℃.潮解性で,水100 g に対する溶解度は97 g(0 ℃),112 g(20 ℃),178 g(100 ℃).エタノールに可溶,エーテルに不溶.もっとも強いアルカリで,化学的性質は水酸化ナトリウムによく似ているが,腐食性,二酸化炭素や水の吸収能は水酸化ナトリウムよりも強い.一,二および四水和物が存在する.カリガラス,軟せっけん,カリウム塩,アルカリ蓄電池,マッチの製造,二酸化炭素の吸収剤,分析試薬,有機合成などに用いられる.劇薬であり,眼や皮膚に触れないように注意する.[CAS 1310-58-3]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「水酸化カリウム」の意味・わかりやすい解説

水酸化カリウム
すいさんかカリウム
potassium hydroxide

化学式 KOH 。カセイカリともいう。工業上は塩化カリウム溶液の電解によって製造する。無色ないし淡黄色の塊。棒状あるいは粒状で市販される。腐食性強く,組織を破壊する。空気中から湿気や二酸化炭素を吸収して潮解する。融点約 360℃。水,アルコール,グリセリンに可溶。水,アルコールに溶かすと多量の熱を発生する。密栓して保存し,手,皮膚に直接触れないように取扱わねばならない。特に溶液を扱うときは,飛沫が目に入らないように保護メガネを着用する必要がある。カリ石鹸,カリガラスの製造,染料の合成,分析試薬,二酸化炭素の吸収剤などに使われるが,高価なため工業的には水酸化ナトリウム (カセイソーダ) ほど広くは使われない。

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百科事典マイペディア 「水酸化カリウム」の意味・わかりやすい解説

水酸化カリウム【すいさんかカリウム】

化学式はKOH。比重2.05(25℃),融点360.4℃,沸点1320〜1324℃。無色潮解性の結晶。苛性カリとも。水に溶かすと発熱し,水溶液は強アルカリ性。アルコールにも可溶。腐食性強く,一般に水酸化ナトリウムよりも化学作用が強い。有機化合物の合成,そのほか化学試薬として重要。カリガラス,軟セッケンなどの製造に使用。塩化カリウム水溶液の電解,または炭酸カリウムを石灰水で苛性化してつくる。

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栄養・生化学辞典 「水酸化カリウム」の解説

水酸化カリウム

 KOH (mw56.11).強アルカリ.加工助剤として使われる食品添加物.

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世界大百科事典(旧版)内の水酸化カリウムの言及

【カリ】より

…海藻灰(主成分はK2CO3)をあらわすアラビア語qāliに由来。カリ球,酒精加里などと呼ぶ場合のカリは水酸化カリウム(苛性カリ)を意味する。カリウムの略称として塩化カリ,炭酸カリ,過マンガン酸カリのように呼ぶことがあるが,正しくは〇〇カリウムと呼ぶのがよい。…

※「水酸化カリウム」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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