日本大百科全書(ニッポニカ) 「セルバンテス石」の意味・わかりやすい解説
セルバンテス石
せるばんてすせき
cervantite
Sb3+とSb5+の両方を含むアンチモンの酸化鉱物。安タンタル石stibiotantalite(化学式SbTaO4)とともに安タンタル石‐セルバンテス石系を構成する。1999年記載された新鉱物の斜セルバンテス石clinocervantiteとは同質異像関係にある。自形報告なし。非常に微細な結晶のみの集合からなり、これが比較的硬い緻密(ちみつ)な集合をなす。原鉱物はおそらく輝安鉱とされているものの、確証はない。1962年に再検討の結果Sb3+Sb5+O4の式が合成物との対比によって確定された。いったん黄安華のようなSb5+を含む二次鉱物が生成され、これから導かれたとする解釈も考えられている。
各種アンチモン鉱床で輝安鉱や黄安華を産出するものの酸化帯に産し、またこれに由来すると思われるほとんどの単鉱物の礫(れき)として産する。日本ではまだ知られていない。共存鉱物は輝安鉱、石英など。同定は白色ないし淡黄褐色細粒物質の集合。案外高い硬度。非常に大きい比重。外観上で方安華senarmontite(Sb2O3)(比重5.58)の礫状のものに似ることもあるが、比重6.64で区別できる。ちなみに合成のSb2O5の比重は5.60である。等軸型Sb2O3の比重5.58がSb2S3の4.60よりも著しく高いのも異常といえば異常である。礫状をなすものはほとんど単鉱物からなる集合である。命名は原産地とされるスペインのセルバンテスCervantesによるが、原標本は保存されておらず、またこの土地に産出の確実な記録がないとされる。
[加藤 昭]