塩化アンチモン(読み)えんかあんちもん(英語表記)antimony chloride

日本大百科全書(ニッポニカ) 「塩化アンチモン」の意味・わかりやすい解説

塩化アンチモン
えんかあんちもん
antimony chloride

アンチモン塩素の化合物。三塩化アンチモン塩化アンチモン(Ⅲ))、五塩化アンチモン(塩化アンチモン(Ⅴ))SbCl5などが知られている。

 三塩化アンチモンは、アンチモンに直接塩素を作用させるか、アンチモンを塩化水銀(Ⅱ)と熱してつくる。無色の結晶、吸湿性で、放置すると粘稠(ねんちゅう)な液体状のものとなるので、古くからアンチモンバターとよばれていた。三塩化アンチモンは水によって加水分解して、酸化塩化アンチモン(Ⅲ)(俗称塩化アンチモニル)SbOClを沈殿するが、塩酸を加えると溶ける。有機溶媒に溶け、クロロホルム溶液はビタミンAの検出試薬(青色を呈する)である。

 五塩化アンチモンは、三塩化アンチモンに塩素をさらに作用させて得られる。無色または淡黄色の液体。空気中では湿気で発煙する。少量の水により一水和物、四水和物を生成するが、多量の水により加水分解する。濃塩酸に溶ける。アセチレンと反応すると四塩化エタンを生じるなど、炭素化合物の塩素化、フッ素化の触媒として用いられる。

[守永健一・中原勝儼]


塩化アンチモン(データノート1)
えんかあんちもんでーたのーと

塩化アンチモン(Ⅲ)
SbCl3
式量228.1
融点73.4℃
沸点223.5℃
比重3.14(測定温度20℃)
結晶系斜方

塩化アンチモン(データノート2)
えんかあんちもんでーたのーと

塩化アンチモン(Ⅴ)
SbCl5
式量299.02
融点4.0℃
沸点68℃(14mmHg)

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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