日本大百科全書(ニッポニカ) 「アンバーグリス」の意味・わかりやすい解説
アンバーグリス
あんばーぐりす
ambergris
精油の一つ。マッコウクジラの腸内に発生した結石を乾燥したもので、竜涎香(りゅうぜんこう)ともいう。竜涎香そのものはほとんど香気を有していないが、香気成分をアルコールに溶かして保留剤として用いる。主たる香気成分はアンブレインambreinというトリテルペン化合物である。マッコウクジラはイカを常食にするので「イカのくちばし」といわれる角質が体内に蓄積し、これが結石となって体外に排泄(はいせつ)される。この比重の軽い(0.9~0.92程度)蝋(ろう)状の塊が竜涎香とよばれ、排泄されて海上に浮遊していたり、海浜に打ち上げられていることもある。また、捕獲したクジラの体内から取り出されることもあった。しかし、1986年に国際捕鯨委員会(IWC)によりマッコウクジラの捕獲が禁止されたため、現在アンバーグリスはほとんど使われず、合成香料に置き換えられている。いままでに発見された最大のものは336ポンド(約152キログラム)もあった。
[佐藤菊正]