岐阜県西部の市。2004年2月糸貫(いとぬき),真正(しんせい),本巣の3町と根尾(ねお)村が合体して成立した。人口3万5047(2010)。
本巣市南部の旧町。旧本巣郡所属。人口1万1799(2000)。揖斐(いび)川支流の根尾川の中流東岸に位置し,町域の大部分は根尾川扇状地の扇央部から成る。町の中央を南流していた糸貫川の流域は,古代から中世にかけてこの地方一帯の文化の中心をなし,町内上保で縄文式土器が出土したほか,船木山古墳など古墳が多く,奈良時代には町域を含む本巣郡の東部が席田(むしろだ)郡となり,定額尼寺も建てられ,平安末期には席田荘が成立した。米を中心に梨,タマネギの生産が盛んで,また富有柿の大産地として知られる。南北に樽見鉄道線が走る。
本巣市南端の旧町。旧本巣郡所属。1964年町制。人口1万1556(2000)。根尾川の東岸に位置し,根尾川扇状地の扇端部を占める。北隣の旧糸貫町から南の瑞穂市の旧巣南町にかけて条里制の跡がみられ,町内にも十四条などの字名が残っている。豊富な湧水と砂質土壌に恵まれ,良質米と果樹の産地であったが,現在は果樹,花卉の集団栽培など都市近郊型農業に変わってきている。かつてはマクワウリの名産地であり,その名は旧村名真桑村による。樽見鉄道線,名鉄揖斐(いび)線(2005年廃止)が通り,交通の便がよいため岐阜市と大垣市への通勤者も多い。本郷では古くから真桑文楽が伝承されている。
本巣市北部の旧村。旧本巣郡所属。人口2184(2000)。根尾川上流域の山村。能郷(のうご)白山(権現山)を主峰とした美濃越前山地が大部分を占め,低地に乏しく,河川流域に集落と耕地が散在する。中心集落は樽見。村の中央を根尾川に沿って樽見鉄道線が走り,ほぼ平行する国道157号線は,温見(ぬくみ)峠越えで福井県に通ずる。農林業を主とするが,零細農家が多い。1891年濃尾地震の際にできた根尾谷断層(特天)は村内水鳥(みどり)での垂直変位が6mにも達し,現在もその跡が残る。板所(いたしよ)にある樹高23m,胸高幹囲8.3mに達する淡墨桜(天),丸山で産出する菊花石(特天)が知られる。能郷白山の麓にある白山神社には古い能面や能装束が伝わり,例祭には重要無形民俗文化財の能や狂言が奉納される。
本巣市中部の旧町。旧本巣郡所属。人口8361(2000)。根尾川東岸に位置する。町域の6割は両白山地に属する山地で,南部に根尾川扇状地の扇頂部にあたる低地が開ける。樽見鉄道線が通じ,並行して国道157号線が走る。主産業は農業で,米作を中心にトマト,イチゴなどの施設園芸が行われ,タマネギの栽培も盛んである。南部の山口および隣接する大野町で産出される石灰石を原料にセメント工場が立地する。岐阜市への通勤者も多い。山口などに条里制遺構がみられる。席田用水付近はホタルの名所として知られる。
執筆者:上田 雅子
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
岐阜県南西部の市。2004年(平成16)本巣(もとす)郡本巣町、真正町(しんせいちょう)、糸貫町(いとぬきちょう)、根尾村(ねおむら)が合併、市制施行して成立。北部は根尾川上流域で、中・南部では同川が西隣の揖斐(いび)川町、大野町との境界を南流する。南に濃尾平野が広がる。国道157号、303号、418号、樽見鉄道(たるみてつどう)が通じ、北に接する福井県や、大垣市、岐阜市に通じる。農業では米、ナシ、イチゴ、花卉(かき)などの栽培が盛んで、ほかに、古くからマクワウリの産地として知られる。富有(ふゆう)ガキは特産である。南部の根尾川沿いに住友大阪セメントなどの工場があり、市内には数屋(かずや)、長屋、十四条、温井(ぬくい)、海老(かいろう)などに工業団地も造成されている。また岐阜、大垣両市への通勤者が多い。上真桑(かみまくわ)の真桑人形浄瑠璃、根尾能郷(ねおのうごう)の能郷の能・狂言は国の重要無形民俗文化財に指定されている。北部の根尾地区には根尾松田の菊花石、濃尾(のうび)地震(1891)で生じた根尾水鳥(みどり)の活断層(根尾谷断層)があり、それぞれ特別天然記念物に指定されている。また、淡墨(うすずみ)公園には樹齢1500余年といわれる根尾谷淡墨ザクラ(天然記念物)がある。そのほか、観光・文化施設に「うすずみ温泉」「NEOキャンピングパーク」「文殊(もんじゅ)の森」、道の駅「織部の里もとす」、本巣歴史民俗資料館などがある。面積は374.65平方キロメートル、人口3万2928(2020)。
[編集部]
岐阜県南西部、本巣郡にあった旧町名(本巣町(ちょう))。現在は本巣市の中央南寄りを占める一地区。1950年(昭和25)山添(やまぞえ)、文殊(もんじゅ)の2村が合併して本巣村となり、1956年外山(とやま)村と合併、1960年町制施行。2004年(平成16)真正(しんせい)町、糸貫(いとぬき)町、根尾(ねお)村と合併、市制施行して本巣市となる。山口は、根尾谷の谷口にあたり、かつては谷汲(たにぐみ)山華厳(けごん)寺や根尾方面への往来のための休憩・宿泊の地であった。また、根尾川下流の扇状地水田地帯への席田(むしろだ)用水取り入れ口のある所で、川沿いに住友大阪セメントなどの工場も立地する。南東部、丘陵南縁は岐阜市に接し、住宅団地が開発されている。樽見鉄道、国道157号が通じる。
[上島正徳]
『『本巣町史』全2巻(1975・本巣町)』
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