日本大百科全書(ニッポニカ) 「イカ・チンチャ文化」の意味・わかりやすい解説
イカ・チンチャ文化
いかちんちゃぶんか
南アメリカ、ペルー南部のイカIca、チンチャChincha(いずれも川の名)地方において、紀元後1000年以後に栄えた文化。16世紀のスペイン文書によれば、イカ、チンチャ両川の流域には首長制社会が存在し、その中心地の遺跡として、前者のタカラカ、後者のラ・センティネラがある。とくにチンチャの首長は強い権威をもち、クスコのインカ(王)もそれを認めていた。遺物としては、タピアとよばれる土壁よりなる建造物、土器、織物などがあるが、土器は両地域ともに丸底の壺(つぼ)、鉢が主で、連続した幾何学文様または様式化された幾何学文様をもつ。しかし、イカの土器が前代のエピゴナルとよばれる伝統を継いで多色の細い文様を示すのに対し、チンチャの土器は黒色のものが多く、彩色土器の図柄も大まかである。両文化とも15世紀中ごろインカ人に征服され、土器の様式もクスコ土器の影響を強く受けた。
[増田義郎]