日本大百科全書(ニッポニカ) 「イカ釣り漁業」の意味・わかりやすい解説
イカ釣り漁業
いかつりぎょぎょう
イカ釣り漁業は、日本沿岸水域においてほかの漁業種類との兼業で季節的に操業する兼業型の小・中型イカ釣り漁業、日本海・太平洋北部水域を5月~翌年2月にかけて長期的に操業する専業型の中型イカ釣り漁業およびニュージーランド水域・南西大西洋水域などの外国水域を中心に操業する大型イカ釣り漁業に大きく分類される。
漁業管理制度としては、30トン以上の漁船によるイカ釣り漁業は2002年(平成14)4月1日以降大臣の承認漁業から指定漁業となった(2020年〈令和2〉12月1日以降は大臣許可漁業に移行)。30トン未満の漁船によるイカ釣り漁業については、おもに日本海および太平洋北部の道府県において、おもに知事許可漁業または海区漁業調整委員会の承認漁業となっているが、一部の県については自由漁業となっている。なお、5トン以上30トン未満の漁船によりスルメイカを釣る者については、1998年(平成10)からのスルメイカの漁獲可能量制度(TAC:Total Allowable Catch)の導入にあたり、操業区域などの実態を把握する必要があることから、小型スルメイカ釣り漁業として1997年から大臣への届出漁業に位置づけられている。30トン以上の漁船を使用するイカ釣り船は1977年(昭和52)に約2700隻あったが、1981年にイカ流し網漁業が、大臣の承認制に移行した際、イカ資源に対する漁獲強度に配慮して中型・大型イカ釣り漁業の廃業を見合いの要件として承認されたことから、1982年から1983年にかけて30トンから100トンの中型船が約900隻、100トン以上の大型船が約70隻減少している。また、1982年から1884年の3年間に160隻、1990年から1992年の3年間で112隻の減船が行われている。
その後も1999年から日韓・日中漁業協定の実施に影響があるものを対象とした減船事業を実施していることや、加えて2007年8月の一斉更新で中型イカ釣り漁業と大型イカ釣り漁業の許可水域を統合したことにより、許認可隻数はさらに減少となり、2010年10月1日時点の許認可隻数は127隻となった。
イカ釣り漁業による漁獲量は、1968年の65万トンを最高に以後減少を続け、1980年には45万トン台に回復したものの1981年以降減少し1986年には日本海が異常低温にみまわれたことから過去最低の22万トンとなった。1987年以降は日本海のスルメイカおよび海外漁場の豊漁により40万トン台に回復した。1990年以降、海外イカ釣り漁場のうち、ニュージーランド200海里漁業水域の漁獲割当が消滅(現在は合弁事業で実施)したことにより、漁獲量は減少した。その後、小型イカ釣り漁業の豊漁により1992年からふたたび40万トン台に回復し豊漁年が続いていた。1998年には大不漁にみまわれ漁獲量は約29万トンと減少したが、2001年は約38万トンに回復した。2002年は大型イカ釣り漁業の海外漁場の不振から漁獲量はふたたび約29万トンとなり、その後も20万トン台を推移した。2007年は約18万トンと20万トンを割り、2008年は約16万トンとなっている。
[三浦汀介]
『水産年鑑編集委員会編『水産年鑑2011』(2011・水産社)』