イグナロ(読み)いぐなろ(英語表記)Louis J. Ignarro

日本大百科全書(ニッポニカ) 「イグナロ」の意味・わかりやすい解説

イグナロ
いぐなろ
Louis J. Ignarro
(1941― )

アメリカの薬理学者。ニューヨーク州ブルックリン生まれ。1962年コロンビア大学薬学部を卒業。ミネソタ大学に進学し、1966年に薬理学で博士号を取得。国立心臓・肺・血液研究所で2年間の研究を経て、ガイギー社(現、ノバルティス)に入社、非ステロイド性抗炎症薬の開発に携わりながらサイクリックグアノシン三リン酸(cGMP)について研究。1973年チュレーン大学助教授、1979年同大学教授。1985年にカリフォルニア大学ロサンゼルス校教授となる。

 1980年代初めにR・ファーチゴットが提唱した未知の分子EDRF(endothelium derived relaxing factor、血管内皮由来拡張因子)の本態を同定する研究を行った。ヘモグロビンにEDRFを投与し、それを分光光学的に解析する手法を用いて、EDRFが一酸化窒素NOであることを明らかにした。これらの功績により、ファーチゴット、F・ムラドとともに1998年のノーベル医学生理学賞を受賞した。

[馬場錬成 2018年6月19日]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「イグナロ」の意味・わかりやすい解説

イグナロ
Ignarro, Louis J.

[生]1941.5.31. ニューヨーク,ブルックリン
アメリカの薬理学者。 1962年コロンビア大学を卒業後,66年ミネソタ大学にて博士号を取得。 79~85年ニューオリンズのタレーン大学薬学部教授。 85年からカリフォルニア大学ロサンゼルス校教授。 86年に気体が生体内で信号伝達分子として働くことを発見。同年の科学会議で R.F.ファーチゴットが,その気体が一酸化窒素 NOであると発表したことから,それまで大気汚染物質としてしか考えられていなかった NOの有益性を癌や敗血症の治療薬に生かす研究が盛んになり,男性の性的不能治療薬「バイアグラ」の開発の基礎ともなった。ファーチゴット,および狭心症治療薬として用いられていたニトログリセリンから放出される NOが,血管を拡張させるらしいと 1977年に発表した F.ムラドとともに,98年ノーベル生理学・医学賞を受賞。

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