ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ファーチゴット」の意味・わかりやすい解説
ファーチゴット
Furchgott, Robert F.
[没]2009.5.19. ワシントン,シアトル
アメリカ合衆国の薬理学者。ノースカロライナ大学で薬学を学んだのち,1940年ノースウェスタン大学で生化学の博士号を取得。カリフォルニア大学ロサンゼルス校,サウスカロライナ医科大学を経て,1956~88年ニューヨーク州立大学教授。1988年からニューヨーク州立大学健康科学センター名誉教授。1980年血管内部の層状の細胞,すなわち内皮細胞が血管を拡張させる信号伝達分子を生成していることを発見し,この未知の分子を内皮細胞由来弛緩因子 EDRFと名づけた。その後,EDRFが一酸化窒素 NOであることをつきとめた。それまで有害な大気汚染物質としか考えられていなかった NOが,体内で生成され,かつ血圧調節や気管拡張,免疫機構などにおいて重要な働きをする唯一の気体であることを発見した意義は大きい。男性の性的不能治療薬「バイアグラ」の開発もこの発見がもとになっているほか,敗血症や癌などの治療への応用が期待されている。ファーチゴットとは別に,気体が生体内で信号伝達分子として働くことを発見したルイス・J.イグナロ,狭心症治療薬として用いられていたニトログリセリンから放出される NOが血管を拡張させるらしいとの説を 1977年に発表したフェリド・ムラドとともに,1998年ノーベル生理学・医学賞を受賞。
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