改訂新版 世界大百科事典 「イシン」の意味・わかりやすい解説
イシン
Isin
古代メソポタミア,イシン第1王朝(前2017-前1794)の首都。現在のバグダードの南南東約200kmの地点にあるイシャン・アルバフリーヤートIshan al-Bachrīyātに当たる。本来InsinまたはIssinであるが,通常はIsinと書き習わされている。ウル第3王朝の末期に,元ウル王室の家臣であったイシュビエラIshbi-Erraがイシンに独立国家を建て,そこで合計15人の王が統治した。イシン王朝は,政治理念,行政制度,宗教,文学などの面で,ウル第3王朝時代のシュメール的伝統を継承・発展させた。当時の南メソポタミアには他にライバル勢力がなく,イシン王朝は成立後約100年にわたって南メソポタミアに君臨する。しかし法典授与者として知られる第5代王リピトイシュタルの頃,南のラルサに強力なアモリ(アムル)系王国が出現,以後約1世紀以上にわたりラルサとの勢力争いが間欠的に続くが,前1794年ラルサに滅ぼされた。イシンの主神は医療の女神ニンイシンナ(時々グラ女神と同一視される)で,その配偶神はパビルサグである。イシン第2王朝に関しては〈バビロニア〉の項目を参照されたい。
執筆者:中田 一郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報