日本大百科全書(ニッポニカ) 「イヌブナ」の意味・わかりやすい解説
イヌブナ
いぬぶな / 犬橅
仙毛欅
[学] Fagus japonica Maxim.
ブナ科(APG分類:ブナ科)の落葉高木。高さ15~20メートルくらいで株立ちする性質が強い。樹皮は暗灰色でクロブナともよばれ、いぼ状の皮目が多く、ざらつく。1年枝は紫褐色で細く、ジグザグに曲がる。冬芽は細長い紡錘形で褐色の鱗片(りんぺん)に包まれる。葉は左右不同の長楕円(ちょうだえん)形で長さ5~9センチメートル。側脈は13対以上。裏面は長絹毛が多く灰白色であるが、落ち葉では紫褐色となり、ブナのような光沢はない。殻斗(かくと)は3~4センチメートルの細い柄をもち、長さは堅果のほぼ半分で、中に三稜(さんりょう)形で黒褐色の2個の堅果を包む。岩手県から九州までおもに太平洋側のブナ帯下部に分布し、斜面中下部の湿気のある肥沃(ひよく)な土壌を好む。材質はブナ同様であるが大径とはならず、利用面で劣るため、犬ブナの名がある。起源が古く世界で多くの化石がみつかっている。
[萩原信介 2020年1月21日]