日本大百科全書(ニッポニカ) 「イベリア人」の意味・わかりやすい解説
イベリア人
いべりあじん
イベリア半島に居住した種族を古代ギリシア人はイベリア人とよんでいた。イベリアという名称はスペイン東部を流れるエブロ川に由来する。イベリア半島にはかなり古くから人類が生活したらしく、旧石器時代の人骨や遺物が発見される。紀元前3000年代ごろ、アフリカからハム系のイベリア人が移住してきた。地中海沿岸地方にはギリシア人やフェニキア人が住み始めたが、イベリア人という名称は彼ら以外の先住民をさしたらしく、その範囲は明瞭(めいりょう)ではない。前10世紀ごろ、中部ヨーロッパからインド・ヨーロッパ語族系のケルト人がイベリア半島東部に移住してきた。これら諸族が混血してイベリア半島中部の高原地方一帯に分布した。これがケルト・イベリア人で、スペイン人の基本的部分をなしている。ピレネー山脈地方にはケルト人の来住以前からバスク人が居住しており、これがイベリア人とよばれることもある。
[斉藤 孝]