エブロ川(その他表記)Río Ebro

改訂新版 世界大百科事典 「エブロ川」の意味・わかりやすい解説

エブロ[川]
Río Ebro

スペイン北東部の川。カンタブリア山脈の中部,サンタンデル南東に源を発し,エブロ構造谷を南流し,カタルニャ地方タラゴナ県のアンポスタで地中海に入る。全長910kmで,イベリア半島第2の長流。流域面積は8万5000km2ピレネー山脈に発するアルガ,アラゴン,シンカ,セグレなどの支流を集め,乾燥地帯を流下するわりには水量は豊富。ピレネー山脈の河川には多くのダムがつくられ,その発電量はスペイン全体の20%近くに達し,おもにバスクやカタルニャ地方の工業地帯に供給される。古来,灌漑水路として重視され,16世紀にインペリアル運河(全長116km)がつくられた。中流域では牧草テンサイなどが栽培され,機械化も進んでいる。リオハのブドウ栽培はその同名のブドウ酒によって名高い。非灌漑地域では穀物栽培が卓越し,アラゴン地方のアカンポスのように200haをこえる大規模な企業的農業経営体もみられ,灌漑地域の零細な土地所有と対照をなしている。流域は歴史的にはナバラ王国アラゴン王国の地であり,アラゴン王国の首都サラゴサは,現在でも流域最大の都市である。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「エブロ川」の意味・わかりやすい解説

エブロ川
えぶろがわ
Ebro

スペイン北東部の川。カンタブリカ山脈中の標高870メートルに発し、ピレネー山脈の南麓(なんろく)を南東流して地中海に注いでいる。長さ910キロメートル、流域面積8万3000平方キロメートルで、ともにイベリア半島第2位である。水位の変化が大きいが、貯水池や運河の建設により15万ヘクタールを灌漑(かんがい)し、穀物、果樹、野菜などの栽培を助けている。またピレネー山脈の山麓を流下する支流、とくにセグレ川流域における水力発電は重要である。外航船はトルトサまで、小さな船はトゥデラまで航行可能である。

[田辺 裕・滝沢由美子]

歴史

スペイン屈指の広い流域と豊富な水量を誇るエブロ川は、古くから水車の動力と水運に使われ、アラゴンの穀物をカタルーニャへ運ぶ重要な水路であった。農耕地が拡大し、運送量も増えた16世紀になると、流域の運河計画がおこり、とりわけ18世紀カルロス3世はこれを国家的事業とした。1852年王立運河開発公社が設立され、さらに20世紀に入りホアキン・コスタの開発計画へと進展する。「スペインのナイル川」といわれるほど、灌漑と発電に大きな役割を果たしている。

[丹羽光男]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「エブロ川」の意味・わかりやすい解説

エブロ川
エブロがわ
Ebro

ラテン語ではイベルス Iberus。イベリア半島の五大河川のうち,地中海に注ぐ唯一のもの。全長 910km,スペイン国土の約6分の1の流域面積 (8万 5500km2) をもつ。カンタブリカ山脈に源を発し,ピレネー山脈南側の水を集め,南東に流れてタラゴナ県の三角州にいたる。アロまでは急流,トゥデラにいたって水量の豊富な支流が合流する。 200以上の支流があるが,ピレネー山脈側の支流のほうが水量は豊富。水力発電,灌漑に利用され,最大のダムは本流の最上流部,レイノーサに近いエブロ・ダムである。トゥデラから下流,サラゴサまでの川の右岸は,カルロス1世 (カルル5世) の時代に造られた水路によって灌漑されている。

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世界大百科事典(旧版)内のエブロ川の言及

【アラゴン】より

…主都はサラゴサ。北は中央ピレネー山脈の山岳地帯,中央にはエブロ川流域の肥沃なバルデス平野,南はテルエル高地帯からなる。大陸性気候で冬の寒さは厳しい。…

【国土回復戦争】より

… コバドンガの戦からも推測されるように,イスラム教徒のイベリア征服は完全ではなく,その後もこの欠陥を補う努力は一度もなされなかった。アル・アンダルス――イスラム教徒は半島の征服部分をこの名で呼んだ――の首都はコルドバに置かれ,東部のエブロ川流域と南部のグアダルキビル川流域にはやがてイスラム社会が定着したのに対して,北部と西部は初めから彼らの関心外に放置された。加えてアル・アンダルス内部は紛争が尽きず,後ウマイヤ朝の成立(756)も事態収拾への転機とはならなかった。…

※「エブロ川」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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