日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
インターナショナル・キャッシュ・マネジメント
いんたーなしょなるきゃっしゅまねじめんと
international cash management
国際的なグループ企業全体の財務を一元的に管理するシステム。欧米の多国籍企業をはじめ、企業経営のグローバル化が進展するとともに、企業の国際財務は一元化する傾向が強い。物と違いお金という差別化の少ないものを対象にしているため、企業経営のなかでもっとも一元化、集中化による効果が得やすい職能分野であるからである。インターナショナル・キャッシュ・マネジメントは、プーリング、ネッティング、為替リスク管理、グループ全体としての金融市場での資金調達、運用等を、総合的かつ一元的に管理するものといえる。
資金管理面を具体的にみていくと、システムを統括、運営するセンターが、グループ企業の全資金をプーリング・システムにより効率よく一括管理することが、このマネジメントの中核となる。その結果生じるグループ全体の余剰資金の運用、不足資金の調達は、グループ・ファイナンスという形で一元的に実施される。多数の企業の資金の動きを、あたかも一つの財布(プール口座)への出し入れのように管理するのである。
また取引決済について具体的にみると、主としてグループ企業間の取引に伴う受取債権および支払債務を周期的に集計、相殺し、ネット分のみを送金決済するネッティングや、グループ以外の企業との取引によって生じる受取債権、支払債務をネッティングしたうえで回収・支払代行システムによって、ため受け、ため払いをするといったように、効率的な決済業務も遂行する。これら業務に付随する為替リスクの管理も含まれる。
国際間の資金決済を伴うため、グローバルに業務展開する大手銀行が提供しているサービスを活用することが多いが、自社独自のシステムを構築しているところもある。
[中條誠一]