日本大百科全書(ニッポニカ) 「為替リスク」の意味・わかりやすい解説
為替リスク
かわせりすく
exchange risk
外国為替相場の変動によって被る損失のこと。変動為替相場制のもとでは、対外的な受け払いを外貨建てで行うと、つねに為替リスクにさらされる。たとえば貿易業者が輸出をする場合、契約成立から代金回収までには時間がかかるので、この間に為替相場が変動し、為替リスクが生まれる可能性がある。いま為替相場が輸出契約成立時点では1ドル=110円であったのが、代金回収時点では1ドル=105円になったとすると、1ドルにつき5円の為替差損が発生することになる。このような為替リスクを回避するために、貿易業者は一般に契約が成立するとただちに外国為替を取り扱う銀行に為替予約(先物(さきもの)為替取引)をする。こうした為替リスク対策は金利裁定のような短期的な資金運用においても行われる。なぜなら、投資時点と元利回収時点の間で為替相場が変動する可能性があるからである。為替相場の変動によっては為替差益を生むこともあるが、投機を目的としない限り、リスク回避策をとるのが普通である。
[土屋六郎]