日本大百科全書(ニッポニカ) 「システム」の意味・わかりやすい解説
システム
しすてむ
system
各構成要素が相互にある種の関係をもちながら形成する一つの「全体」をさす。ギリシア語systēmaに由来する。古来、人間の客体認知カテゴリーの一つに、複数の要素からなる「ある全体」を指示する概念があったと思われるが、それらは個々の対象の性質に応じて、群、集合、全体、グループ、系などとよばれてきた。システムという概念は、こうしたさまざまな類似概念の間にある共通の構造(アイソモルフィズム)に注目して、近年、意図的にその理論的洗練が推し進められたものであり、ベルタランフィなどによって、GST(General Systems Theory=一般システム理論)として体系化されるようになった。その意味で、システム概念はきわめて抽象的なレベルに位置し、システムが、これを構成する個々の要素には還元不可能なある種の「創発的特性」emergent propertyをもつという主張を基礎にしている。
その抽象性のゆえに、システムそのものは個々の具体的領域に応じて、(1)その単位(要素)の決定において、(2)それらが形成する関係の種類の確定において、多様なバリエーションを示す。たとえば、力学的客体の相互引力関係としての太陽系から、個々の役割の機能的相互補完関係によって成立している社会集団に至るまでその適用範囲は広い。こうした考え方(概念化)を踏まえつつ、種々の領域でのシステム分析、システム工学が可能となったのである。
[中野秀一郎]
『W・バックレイ著、新睦人・中野秀一郎訳『一般社会システム論』(1980・誠信書房)』▽『新睦人・中野秀一郎著『社会システムの考え方』(1981・有斐閣)』