電子回路を用いて連続波の交流信号を発生する回路。エネルギーは直流電源から供給される。発振波の波形により正弦波発振器,矩形波発振器,ブロッキング発振器などに分類される。
コンデンサーを充電しておき,これにコイルをつなぐと正弦波の振動電圧を発生する。しかし,回路内部の抵抗分によって振動振幅は指数関数で減少して静止状態に戻る。振動を持続するためには抵抗分を打ち消すための負性抵抗が必要である。無線通信の初期にはこの負性抵抗を実現するためにアーク放電が用いられた(図1)。アークは放電電流が大きくなると端子間の電圧が減少するという性質があり,これが負性抵抗として動作する。真空管の発明によって増幅が可能になり,増幅器に正帰還をかけることによってより安定な負性抵抗が実現され,アークにとって代わった。現在ではトランジスターを用いた発振器が主流を占めている。正弦波発振器には,LC発振器,RC発振器,ウィーンブリッジ回路を用いた発振器などがある。
LC発振器には数多くの構成があるが,代表例としてコルピッツ発振回路を示す(図2)。トランジスターはエミッターフォロワーとして動作し,LC共振回路の振動電圧を電力増幅してエミッターからRfを通して共振回路に電力を供給する。
RC回路はLC回路のように鋭い共振特性を得ることはできないが,増幅器の帰還路にRC回路をいれると,ループ利得の位相が0になる周波数で正弦波発振が得られる。図3は演算増幅器を用いたウィーンブリッジ発振回路である。左側のRC回路による帰還路が正帰還ループ,右側のR1,R2による帰還路が負帰還ループを形成する。正帰還路の位相が0で,正帰還路の利得が負帰還路の利得より大きいとき発振する。ウィーンブリッジ発振回路は数Hzから数十MHzまでの広い可変周波数領域をとることができ,波形ひずみもLC発振器に比べてずっと少なくすることができるので広く用いられている。
トランジスターをスイッチとして使い,RCの充放電回路と組み合わせて矩形波を発振させることができる。図4はマルチバイブレーターとも呼ばれ,2個のトランジスターはたすき掛けで正帰還ループを形成している。ループ利得がきわめて大きいため,一方のトランジスターが導通しはじめるとすぐ飽和状態にはいり,他のトランジスターは遮断状態になる。しかし,遮断状態のトランジスターのベースにつながれたCはR2を通して正方向に充電され,一定間隔でトランジスターの導通が入れ代わり,コレクターには矩形波が得られる。発振器にはこのほか,水晶発振器,のこぎり波発振器などがある。
執筆者:柳沢 健
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
直流の電気エネルギーから持続的に必要な周波数の交流の電気エネルギーを取り出す装置。電子管やトランジスタなどの増幅器では、制御格子やベース電極に交流入力信号がないときは出力回路には雑音だけが出ている。これらの増幅器の入力回路にコイルとコンデンサーとからなる共振回路を設けておき、出力の一部を入力回路に戻してやるように接続しておくとする。この回路に直流電源を供給すると出力回路に小さな雑音が発生し、その一部が入力回路にフィードバックされる。そして雑音成分のなかに含まれる共振周波数に等しい成分だけが増幅回路に入って増幅され、出力に現れる。この出力の一部が再度入力回路にフィードバックされるような現象を繰り返す結果その電力が大きくなり、フィードバック量も増大してゆく。これがさらに増大してゆくと増幅素子が飽和に達するが、その前にフィードバック量が減少してくるから一定のレベルで安定する。この現象は、回路に電源を接続する瞬間に発生するもので、交流入力信号がないにもかかわらず交流出力が得られるから、回路に供給した直流電源のエネルギーの一部が交流の電気エネルギーに変換されたことになる。この現象を発振とよび、このような回路を発振器とよぶ。
発振器の発振周波数は、出力電圧とフィードバックされた入力電圧との位相差が180度になる周波数である。この条件が満足されると、非常に安定に起動する発振器となる。発振器は、正帰還(増幅した信号の一部を入力に戻す)増幅器の帰還回路中に共振回路という一種のフィルターを挿入して、発振する周波数が一定になるようにした回路と考えることができる。具体的には、ハートレー回路、コルピッツ回路などがあり、フィルター部分を水晶片と置き換えたものが水晶発振器である。水晶発振器は発振周波数確度がよいために確度が必要な装置に使用される。水晶発振器で超短波の発振をさせたいときは、特別のカットで高調波発振(オーバートーン)させる。1000メガヘルツ程度までは、これをバラクター(専用の可変容量ダイオード)で逓倍(ていばい)して用いることが多い。衛星通信やレーダーなど数千メガヘルツの発振器には、クライストロン(速度変調管)、進行波管、マグネトロン、ガンダイオードなどが用途に応じて用いられる。これらの発振器の安定度はかならずしもよいものばかりではないから、AFC(自動周波数制御)回路を用いて水晶発振器などと比較し安定化することもある。デジタル回路によく用いられるものにマルチバイブレーターという発振回路がある。この回路は2個のトランジスタを対象に接続して交互にオン・オフをさせる方法の発振器で、出力波形が矩形(くけい)波である点がいままでの発振器と異なっている。この回路の変形としてフリップフロップ回路があって、周波数を2分の1にする性質があり、これを組み合わせて何分の1にでもできる回路群が形成できる。この回路群と逓倍器、濾波(ろは)器、混合器などを組み合わせて、1個の安定な水晶発振器の発振周波数を基に、その装置に必要などんな周波数でも発生させる装置があり、これを周波数シンセサイザーという。周波数シンセサイザーは、たくさんの正確な周波数を必要とするシステムをつくるのに都合がよい。送信機、受信機に内蔵される発振器として多くの通信装置に使用されるようになった。
特殊な発振器として電圧制御発振器voltage controlled oscillator(VCO)がある。この発振器は発振周波数を直流電圧によって制御できるのが特徴で、AFCや周波数変調の復調に応用される。
[石島 巖]
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