化学辞典 第2版 「ウィグナー-ザイツ法」の解説
ウィグナー-ザイツ法
ウィグナーザイツホウ
Wigner-Seitz method
金属内電子のエネルギー帯構造についての計算には,電子の量子状態を自由電子の状態から近似する方法と,原子に強く束縛された状態から近似する方法とがあるが,これら両極端からの近似は実際問題としてよい方法とはいえない.1933年,E.P. WignerとF. Seitzは,その中間状態にある電子を扱う近似方法を提唱した.これをウィグナー-ザイツ法という.それはまず,金属結晶内の空間を各原子を中心として包む多面体,たとえば体心立方格子(図(a))の場合,正八面体の六つの角を切った形の多面体(図(b))によって分割する.これら各多面体内部は電気的に中性であり,また多面体の対称的配置から互いの影響は無視できて,一つの原子はそれが属する多面体内部の電荷からの作用のみを受けると考えてよい.したがって,一つの多面体内部で適当な境界条件のもとに波動方程式を解いて,電子のエネルギー準位を決めることができる.はじめ,この方法はNaにおいて成功をおさめ,のちに種々の金属,イオン結晶などに適用されている.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報