改訂新版 世界大百科事典 「ウィテロ」の意味・わかりやすい解説
ウィテロ
Witelo
生没年:1230ころか35ころ-75ころ以後
中世の光学者。ウィテリオVitellioとも称される。生涯の詳細は不明。ドイツ系開拓民の父とポーランド人の母をもち,シュレジエンのブレスラウ(現在のブロツワフ)近郊に生まれたらしい。1250年代初期にパリで学び,60年代には教会法の学生としてパドバに学んだ。光学への関心はこのころめばえたらしい。ビテルボ教皇庁での知人のムールベーカのギヨームに献呈された主著《光学》全10巻は73年ころに完成されたと推定される。グロステストやR.ベーコンの影響を受け,光学を自然学の基礎とみなした。さらにアラビアの偉大な光学者イブン・アルハイサム(アルハーゼン)の《光学》から最大の影響を受け,光学の理論的内容はほぼ全面的に彼に依拠している。アルハーゼン《光学》の難解な数学的部分を詳しく扱った彼の書は,同時代人の光学者ペッカムの《光学通論》とともに,17世紀まで広く読まれ続ける標準的教科書となった。
執筆者:高橋 憲一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報