ギヨーム(読み)ぎよーむ(その他表記)Charles Edouard Guillaume

デジタル大辞泉 「ギヨーム」の意味・読み・例文・類語

ギヨーム(Guillaume de Champeaux)

[1070ころ~1121]フランススコラ哲学者。普遍論争では極端な実念論を唱えた。

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精選版 日本国語大辞典 「ギヨーム」の意味・読み・例文・類語

ギヨーム

  1. [ 一 ] ( Guillaume de Champeaux ━ド=シャンポー ) フランスのスコラ学者。アウグスティヌスの影響を受け、普遍論争では極端な実念論の立場をとった。(一〇七〇頃‐一一二一
  2. [ 二 ] ( Charles Édouard Guillaume シャルル=エドワール━ ) スイスの金属学者、物理学者ニッケル鋼の研究を行ない、不変鋼インバー(アンバー)を発明、精密機械の精度の向上に大きく貢献した。一九二〇年、ノーベル物理学賞を受賞。(一八六一‐一九三八

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ギヨーム」の意味・わかりやすい解説

ギヨーム
ぎよーむ
Charles Edouard Guillaume
(1861―1938)

スイス生まれの金属学者、物理学者。1883年にフランスの国際度量衡局に就職、1915年同局長となる。初め、水銀温度計の精度やリットル容積の精密な決定の研究をしたが、1890年よりニッケル合金の研究に没頭し、熱膨張率の異常に小さいアンバー(インバーともいう。ニッケル36%、残りは鉄)を発見、続いて弾性率が温度変化に対して安定なエリンバーを発見した。これらの合金は時計のてんぷやひげぜんまいをはじめ、多種の科学計測機器に応用され、それらの精度は著しく改善された。これらの業績により、1920年ノーベル物理学賞を受賞した。なお、アンバーの発見は、その後、合金の応用や金属物理学上に波紋を広げ、アンバー効果の機構については、磁性、結晶学、金属電子論などの面から、いまなお研究が進められている。

[今野 宏]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ギヨーム」の意味・わかりやすい解説

ギヨーム[オーベルニュ]
Guillaume d'Auvergne

[生]1180頃.オーリヤック
[没]1249. パリ
フランスの哲学者,神学者。ラテン名 Guilelmus Alvernus。 1228年パリ司教。イブン・シーナーに基づいて存在 (実存) と本質の区別をスコラ哲学に導入し,神においてのみ両者は不可分とする。しかし被造物の存在は神の存在を分有することによるとし,神の絶対的力を高揚し,この点で S.ガビロルを高く評価した。認識論においても彼は被造物と神の直接的結びつきを強調して,逍遙学派やイブン・シーナーの離存英知の介在を否定,感覚が個物をとらえるように人間知性は直接結びつけられた永遠真理たる神の照明によって普遍的真理を認識するとした。この実念論においてギヨームは完全にアウグスチヌスの伝統に立っており,13世紀におけるアリストテレス主義の普及を遅らせた。主著"De primo principio" "De anima" "De universo"。

ギヨーム[シャンポー]
Guillaume de Champeaux

[生]1070頃.シャンポー
[没]1121.1.18/25. シャロンシュルマルヌ
フランスの哲学者,神学者,普遍論争で知られる。ラテン名 Guilelmus Campellensis。パリでマネゴルドに師事,次いでランのアンセルムスロスケリヌスに学び,パリのノートルダムの学院で教えたが,弟子 P.アベラールとの論争に敗れ,1108年サン・ビクトル修道院に退いて教授となり,サン・ビクトル学派の始祖となった。 1113年シャロンシュルマルヌ司教。実念論者であるギョームは初め種の本質は各個体に共通であるとする普遍者共通論を立てたが,これをアベラールに論破され,普遍者は個物のなかに無差別にあるという無差別論を主張した。神学的著作しか現存せず,その学説はアベラールの"Historia calamitatum"に伝えられている。

ギヨーム
Guillaume, Charles Édouard

[生]1861.2.15. スイス,フルリエ
[没]1938.6.13. セーブル
フランスの実験物理学者。 1883年国際度量衡局に入る。 1915年同局長。初期の水銀温度計の研究,1lの精密な数値決定 (1000.028cm3) などの業績を上げたのち,1890年以降は合金,特にニッケル鋼の研究に向う。線膨張係数のきわめて小さなアンバー (→不変鋼 ) ,弾性率の温度変化の小さいエリンバーを発見し,精密科学機器のすぐれた材料として開発。その功績で 1920年ノーベル物理学賞を受賞した。

ギヨーム[コンシュ]
Guillaume de Conches

[生]1080頃.コンシュ
[没]1154. パリ
中世の哲学者。ラテン名 Guilelmus de Conchis。ベルナルドゥスに学んだシャルトル学派。『ティマイオス』のイデア界を神の英知界に置き換えてプラトンキリスト教化し,聖霊を世界霊魂とした。また L.セネカやキケロによる道徳論を書いて古代哲学とキリスト教の融合に努めた。主著"Philosophia mundi" "Pragmaticon philosophiae"。

ギヨーム[メルベカ]
Guillaume de Moerbeke

[生]1215. メルベカ
[没]1286. コリント?
ドミニコ会士。ラテン名 Guilelmus Brabantinus。パリとケルンに学び,また 1206年以前にギリシアに滞在し,ギリシア語を習得。 1274年リヨン公会議出席。 1278年コリント大司教。トマス・アクィナスの友であり,彼のためにアリストテレスの諸著作を初めてギリシア語より翻訳した。他にアンモニオス,シンプリキウス,ヒポクラテス,プロクロスを訳した。

ギヨーム[サンチエリ]
Guillaume de Saint-Thierry

[生]1080頃.リュティッヒ
[没]1149.9.8. シニィ
フランスの哲学者,神学者。 1119~35年サンチエリのベネディクト会修院長。のちシトー会士。ベルナルドゥスの友。修道生活を根底とし,原罪にもかかわらず残されている記憶の力を強調する独自の神愛論を説いた。主著"Epistola aurea" "De contemplando Deo" "De natura et dignitate amoris"。

ギヨーム[オクセル]
Guillaume d'Auxerre

[生]?
[没]1231.11.3. ローマ
中世の哲学者。ラテン名 Guilelmus Antissiodorensis。パリ大学教授。ボーベの助祭長。独自の道徳論を展開。グレゴリウス9世によってアリストテレスの著作の誤りを正すべき一人に指名された。主著"Summa aurea"。

ギヨーム
Guillaume, Jean Baptiste Claude Eugène

[生]1822. モンバール
[没]1905. ローマ
フランスの彫刻家。ローマ彫刻を範とした肖像,人物像を制作。ナポレオン1世,アナクレオン,グラックス兄弟のブロンズの胸像が有名。パリ美術学校の教師として活躍。

ギヨーム[サンス]

「ウィリアム[サンス]」のページをご覧ください。

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改訂新版 世界大百科事典 「ギヨーム」の意味・わかりやすい解説

ギヨーム
Charles Édouard Guillaume
生没年:1861-1938

フランスの物理学者。スイスに生まれ,チューリヒ工科大学に学ぶ。1883年,パリ郊外セーブルの国際度量衡局に就職し,1915年から36年退職するまで同局長を務めた。初期には温度測定を扱い,水銀温度計の補正に関する研究を行った。次いで長さの原器の熱膨張に関する研究を行い,メートル法普及のための安価な原器用合金として,ニッケル鋼の特性に着目し,インバー(1897),エリンバー(1919)をつくり,それらの応用についての研究を重ねて,測地学,度量衡学に多大の寄与をした。1920年ノーベル物理学賞受賞。
執筆者:


ギヨーム(ムールベーカの)
Guillaume de Moerbeke
生没年:1215ころ-86ころ

フランドル出身のドミニコ会士。1272-78年まで教皇の礼拝堂付き司祭および聴罪司祭を務め,78年コリント大司教に任ぜられ没するまでその要職にあった。学問史上における彼の最大の貢献は,多数の学術書をギリシア語からラテン訳したことにある。《アリストテレス全集》の完訳が著名であるが,ほかにアルキメデス,ヘロン,プロクロス,シンプリキオス等の翻訳も彼の手になる。
執筆者:

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化学辞典 第2版 「ギヨーム」の解説

ギョーム
ギョーム
Guillaume, Charles Edouard

スイス生まれのフランスの物理学者.チューリヒ工科大学で学位を取得.1883年パリの国際度量衡局物理部門に就職し,のちに局長となった.研究者にメートル法を普及させるためには,安価で精密なメートル原器開発が重要だと考え,Pt-Ir合金の原器のかわりに,Ni合金に着目した.1897年鋼鉄にNiを36重量% 加え,熱膨張率が不変(invariable)のインバー合金を得た.これが測地線標準器に応用され,測地学を大いに盛り立てた.さらにクロノメーターの精度向上をはかり,ヒゲぜんまいの弾性率が不変(élasticité invariable)となるエリンバー(Elinvar)合金の開発に取り組む.1919年Ni 36重量%,Cr 12重量% を鋼鉄に加え,目的の合金を得た.この結果,時計の精度は飛躍的に上昇した.これらの業績に対し,1920年ノーベル物理学賞を受賞した.

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百科事典マイペディア 「ギヨーム」の意味・わかりやすい解説

ギョーム

フランスの物理学者。スイスに生まれ,チューリヒ工科大学を出て,1883年国際度量衡局に勤務,1915年同局長。温度測定について研究,1897年不変鋼インバーを発明,その応用についても研究した。1920年ノーベル物理学賞。
→関連項目エリンバー

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世界大百科事典(旧版)内のギヨームの言及

【フランシスコ会】より

… フランチェスコは26年病苦とキリストの神秘の〈まねび〉の内に没したが,彼の人格を慕う無数の弟子たちは灰色の頭巾つき修道服に帯ひもをしめ,はだしにサンダルをはいて苦行にちかい質素な生活を送りながら活動の規模をひろげていった。海外布教にも身を挺し,フランチェスコ自身がエジプトにおもむいた(1219)のをはじめ,リュブリュキのギヨームGuillaume de Rubruquisがモンゴルに派遣される(1253‐55)など多くの会員が異教の地で宣教師として活動した。日本にも1593年(文禄2),ペドロ・バプティスタが来て布教を開始した。…

【アカイア大公国】より

…第4回十字軍に参加したシャンパーニュの2人の封建貴族,ギヨーム・ド・シャンプリットとジョフロア・ド・ビラルドゥアンが,当時モレアとよばれたペロポネソスのギリシア在地豪族を征服して建てた国家(1205‐1430)。国制上《ローマニア法典Assises de Romanie》を基礎とし,フランス封建制を典型的に再現した。…

【エリンバー】より

…エランバーともいう。室温付近での温度変化に対してヤング率がほぼ一定である性質(エリンバー効果)をもっている,Feを主とし,Ni≌36%,Cr≌12%,Mn1~2%の合金。普通の金属・合金はヤング率が温度上昇に伴って小さくなるので(温度係数は10-4/℃程度),ばね特性を利用する精密機器や標準の振動子への使用には不適当である。このため,これらの機器のばねにはエリンバーが用いられる。フランスのギヨームC.E.Guillaumeがインバーの研究中にヤング率の温度変化が0になるFe‐Niの組成を発見,合金名はelastic invariableから名づけられた。…

【国際度量衡局】より

…その業務は,設立当初は長さと質量の国際原器を保管し,各国原器の検査を行うことおよびそれに関連する諸研究に限られていたが,1921年の条約改訂以後,電気,測光および電離性放射線の標準器やおもな物理量の目盛を維持し,かつ業務に関係する物理定数に関し測定と調整を行うよう拡張された。歴史的な業績としては,標準供給という本来の業務のほかに,ギヨームC.É.Guillaumeによるインバーの発見,マイケルソンA.A.MichelsonやファブリC.FabryとペローA.Perotによる光波干渉標準器の研究,佐久間晃彦による重力の絶対測定などがあり,測地学実験室内の地点Aは72年以降〈国際統一重力測定網〉の起点に選ばれている。国際度量衡局の業務の遂行はもっぱら国際度量衡委員会Comité International des Poids et Mesuresの指揮監督を受けて行われる。…

【アルキメデス】より

…そのほか,ヒエロン2世の王冠の金の純度を見分けた有名な逸話と関係のある〈アルキメデスの原理〉の発見(《浮体について》)や,大数の呼名を体系化する(《砂粒を数えるもの》)など,アルキメデスの研究の特色は,理論と実際との結合を目ざしていることであろう。 こうしたアルキメデスの研究は,中世初期のラテン世界では,二,三の基本的な著作の翻訳がなされただけであったが,1269年にムールベカのギヨームによりほとんどの作品がラテン訳され,以後西欧の学者に大きな影響を与えることになった。たとえば,1543年にこのギヨームの訳がタルターリアによって印刷され,それがガリレイの力学研究の出発点になったことは有名である。…

【ウィテロ】より

…光学への関心はこのころめばえたらしい。ビテルボ教皇庁での知人のムールベーカのギヨームに献呈された主著《光学》全10巻は73年ころに完成されたと推定される。グロステストやR.ベーコンの影響を受け,光学を自然学の基礎とみなした。…

※「ギヨーム」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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