ギヨーム(読み)ぎよーむ(英語表記)Charles Edouard Guillaume

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ギヨーム」の意味・わかりやすい解説

ギヨーム
ぎよーむ
Charles Edouard Guillaume
(1861―1938)

スイス生まれの金属学者、物理学者。1883年にフランスの国際度量衡局に就職、1915年同局長となる。初め、水銀温度計の精度やリットル容積の精密な決定の研究をしたが、1890年よりニッケル合金の研究に没頭し、熱膨張率の異常に小さいアンバー(インバーともいう。ニッケル36%、残りは鉄)を発見、続いて弾性率が温度変化に対して安定なエリンバーを発見した。これらの合金は時計のてんぷひげぜんまいをはじめ、多種の科学計測機器に応用され、それらの精度は著しく改善された。これらの業績により、1920年ノーベル物理学賞を受賞した。なお、アンバーの発見は、その後、合金の応用や金属物理学上に波紋を広げ、アンバー効果の機構については、磁性、結晶学、金属電子論などの面から、いまなお研究が進められている。

[今野 宏]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ギヨーム」の意味・わかりやすい解説

ギヨーム[オーベルニュ]
Guillaume d'Auvergne

[生]1180頃.オーリヤック
[没]1249. パリ
フランスの哲学者神学者。ラテン名 Guilelmus Alvernus。 1228年パリ司教。イブン・シーナーに基づいて存在 (実存) と本質の区別スコラ哲学に導入し,神においてのみ両者は不可分とする。しかし被造物の存在は神の存在を分有することによるとし,神の絶対的力を高揚し,この点で S.ガビロルを高く評価した。認識論においても彼は被造物と神の直接的結びつきを強調して,逍遙学派やイブン・シーナーの離存英知の介在を否定,感覚が個物をとらえるように人間知性は直接結びつけられた永遠真理たる神の照明によって普遍的真理を認識するとした。この実念論においてギヨームは完全にアウグスチヌスの伝統に立っており,13世紀におけるアリストテレス主義の普及を遅らせた。主著"De primo principio" "De anima" "De universo"。

ギヨーム[シャンポー]
Guillaume de Champeaux

[生]1070頃.シャンポー
[没]1121.1.18/25. シャロンシュルマルヌ
フランスの哲学者,神学者,普遍論争で知られる。ラテン名 Guilelmus Campellensis。パリでマネゴルドに師事,次いでランのアンセルムスロスケリヌスに学び,パリのノートルダムの学院で教えたが,弟子 P.アベラールとの論争に敗れ,1108年サン・ビクトル修道院に退いて教授となり,サン・ビクトル学派の始祖となった。 1113年シャロンシュルマルヌ司教。実念論者であるギョームは初め種の本質は各個体に共通であるとする普遍者共通論を立てたが,これをアベラールに論破され,普遍者は個物のなかに無差別にあるという無差別論を主張した。神学的著作しか現存せず,その学説はアベラールの"Historia calamitatum"に伝えられている。

ギヨーム
Guillaume, Charles Édouard

[生]1861.2.15. スイス,フルリエ
[没]1938.6.13. セーブル
フランスの実験物理学者。 1883年国際度量衡局に入る。 1915年同局長。初期の水銀温度計の研究,1lの精密な数値決定 (1000.028cm3) などの業績を上げたのち,1890年以降は合金,特にニッケル鋼の研究に向う。線膨張係数のきわめて小さなアンバー (→不変鋼 ) ,弾性率の温度変化の小さいエリンバーを発見し,精密科学機器のすぐれた材料として開発。その功績で 1920年ノーベル物理学賞を受賞した。

ギヨーム[コンシュ]
Guillaume de Conches

[生]1080頃.コンシュ
[没]1154. パリ
中世の哲学者。ラテン名 Guilelmus de Conchis。ベルナルドゥスに学んだシャルトル学派。『ティマイオス』のイデア界を神の英知界に置き換えてプラトンをキリスト教化し,聖霊を世界霊魂とした。また L.セネカやキケロによる道徳論を書いて古代哲学とキリスト教の融合に努めた。主著"Philosophia mundi" "Pragmaticon philosophiae"。

ギヨーム[メルベカ]
Guillaume de Moerbeke

[生]1215. メルベカ
[没]1286. コリント?
ドミニコ会士。ラテン名 Guilelmus Brabantinus。パリとケルンに学び,また 1206年以前にギリシアに滞在し,ギリシア語を習得。 1274年リヨン公会議出席。 1278年コリント大司教。トマス・アクィナスの友であり,彼のためにアリストテレスの諸著作を初めてギリシア語より翻訳した。他にアンモニオス,シンプリキウス,ヒポクラテス,プロクロスを訳した。

ギヨーム[サンチエリ]
Guillaume de Saint-Thierry

[生]1080頃.リュティッヒ
[没]1149.9.8. シニィ
フランスの哲学者,神学者。 1119~35年サンチエリのベネディクト会修院長。のちシトー会士。ベルナルドゥスの友。修道生活を根底とし,原罪にもかかわらず残されている記憶の力を強調する独自の神愛論を説いた。主著"Epistola aurea" "De contemplando Deo" "De natura et dignitate amoris"。

ギヨーム[オクセル]
Guillaume d'Auxerre

[生]?
[没]1231.11.3. ローマ
中世の哲学者。ラテン名 Guilelmus Antissiodorensis。パリ大学教授。ボーベの助祭長。独自の道徳論を展開。グレゴリウス9世によってアリストテレスの著作の誤りを正すべき一人に指名された。主著"Summa aurea"。

ギヨーム
Guillaume, Jean Baptiste Claude Eugène

[生]1822. モンバール
[没]1905. ローマ
フランスの彫刻家。ローマ彫刻を範とした肖像,人物像を制作。ナポレオン1世,アナクレオン,グラックス兄弟のブロンズの胸像が有名。パリ美術学校の教師として活躍。

ギヨーム[サンス]

「ウィリアム[サンス]」のページをご覧ください。

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