ウイルタ族(読み)ウイルタぞく(その他表記)Uilta

改訂新版 世界大百科事典 「ウイルタ族」の意味・わかりやすい解説

ウイルタ族 (ウイルタぞく)
Uilta

サハリン(南樺太)のポロナイ河口,テルペニエ(タライカ)湾の沿岸を中心に,島の東部各地に居住していた少数民族。人口は北サハリンで150~160(1925-28),南サハリンで300(1926)であったが,最近では発表されていない。旧称オロッコOrokko,自称はウイルタ,ウリタ,ウリチャ。ウイルタ語オロッコ語)を話す。第2次大戦後北海道に移住した数家族はウイルタを自称している。かつては小規模なトナカイ飼育を行い,とくに北サハリンでは春夏はオホーツク海沿岸へ,冬には内陸の川の流域へと季節的な移動を伴う生活を営んでいた。物質文化,精神文化にはアムール川流域の原住民に共通する特徴が少なくない。島の造化神として神話に登場する海神ハダウもその一例である。今日,サハリンのウイルタ族はソホーズに所属してトナカイ飼育や海獣猟,漁業に携わっている。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ウイルタ族」の意味・わかりやすい解説

ウイルタ族
ウイルタぞく
Uilta; Ul'chi

サハリン島 (樺太) 北東部と南部に居住する少数民族。ウイルタは自称で,旧称オロッコ (Orokkoまたは Orok) 。人口約 3400 (1989推計) 。第2次世界大戦後は北海道への移民もみられた。言語はツングース=満州語派に属し,アムール川地域の諸民族 (ナーナイ,オロチなど) の言語と共通している。夏と冬で居住地を異にし,夏にはトナカイを山林に放牧し,川辺や海岸に3~10戸の集落を営み漁労にたずさわる。秋にはトナカイを伴って島の内部へ移動し越冬する。外婚的父系氏族を基本とするドハ (氏族連合) の制度,動物や自然の「主」崇拝シャーマニズム熊祭をはじめ,物質文化,装飾文様などにサハリン,アムール川地域の諸民族と多くの共通性が認められる。ソ連時代にはコルホーズに組織された。

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世界大百科事典(旧版)内のウイルタ族の言及

【ソビエト連邦】より

…上記のハンティ,マンシ,ネネツもその一部であるが,大部分はツングース語系諸族と旧シベリア諸族(パレオアジアート,古アジア諸族とも呼ばれる)である。前者には西シベリアからオホーツク海沿岸に分布するエベンキ族,アムール川下流,サハリン,沿海州に分布するエベン族,ナナイ族,ウリチ族,ウイルタ族(旧称オロッコ族),オロチ族などの民族が属し,後者にはコリヤーク族,チュクチ族,イテリメン族(旧称カムチャダール族),ニブヒ族(旧称ギリヤーク族),ユカギール族,ケート族などの民族が属する。 インド・ヨーロッパ語族に属する言語をもつ民族には,前記のロシア人,ウクライナ人,白ロシア人(ベラルーシ人)のほかに,バルト海沿岸にリトアニア人とラトビア人,ウクライナの南に,ルーマニア人と言語・文化の面で近いモルダビア(モルドバ)人がいる。…

【ツングース語系諸族】より

…また,沿海州のウデヘ族は移動生活を送りながら,森林獣の狩猟と河川での漁労を営んだ。ウイルタ族(オロッコ族)はサハリン東部で少数のトナカイを飼い,これを移動・運搬の手段として狩猟や漁労に携わってきた。以上の諸民族は言語のほかにもシラカバ樹皮でつくる円錐形天幕(チュム),舟,揺籃や前開き外套,胸当て・腰当ての組合せによる衣服,共通の氏族の名称,シャマニズムなど,共通の文化要素を長く保持してきたことが知られる。…

※「ウイルタ族」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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