改訂新版 世界大百科事典 「ウィーン磁器」の意味・わかりやすい解説
ウィーン磁器 (ウィーンじき)
Vienna porcelain
オーストリアの最も著名な磁器。1719-1864年,ドイツのドレスデンに次ぐヨーロッパで第2番目に硬質磁器を焼成したオーストリアの名窯。ウィーンの実力者デュ・パキエC.I.du Paquierが,1709年ヨーロッパで最初に真性磁器の焼成に成功したマイセン王立磁器製作所の絵師フンガーKonrad HungerとシュテルツェルSamuel Stölzelを引き抜き,19年ウィーンに工房を開設したのがはじまり。44年工房は経営不振により破産。これを国家が買収,愛陶家の女帝マリア・テレジアのもとで国立ウィーン磁器製作所として新たな出発を見た。ウィーン窯は初期のデュ・パキエ時代にはマイセンを模した東洋風の絵付が行われていたが,国立磁器製作所の時代は,その時代の流行となったロココ風の小人物像やワトー,ブーシェ風の優美な絵付が顕著となった。つづくゾルゲンタールSorgenthal時代(1784-1805)に,ウィーン窯は新古典主義的な作風の典雅なディナー・セットなどを製作したが,その後,経済的にも芸術的にも問題をかかえ,1864年閉窯した。
執筆者:前田 正明
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報