日本大百科全書(ニッポニカ) 「ウェスターマン」の意味・わかりやすい解説
ウェスターマン
うぇすたーまん
William Linn Westermann
(1873―1954)
アメリカの古代史家、とくに古典古代奴隷制研究の大家。1929年のパピルス史料を駆使した最初の奴隷制研究書『プトレマイオス朝エジプトにおける奴隷制』Upon Slavery in Ptolemaic Egypt以来、奴隷制研究に深くかかわり、1935年ドイツの『古代学事典』に執筆した項目「奴隷制」Sklavereiの解説は、古典古代奴隷制諸制度の総合叙述として、現在までの唯一最大の実証的基本文献となっている。これは1955年に遺稿『古代ギリシア・ローマの奴隷制度』The Slave System of Greek and Roman Antiquityとして増補、公刊されている。彼の奴隷制研究の基本的立場は、奴隷制の役割をできるだけ低くみようとするところにあり、その点で批判の余地を残している。
[古川堅治]
『W・L・ウェスターマン著、安藤弘訳『古代ギリシアにおける奴隷制と自由の諸要素』金澤良樹訳『アテナイオスとアテネの奴隷』(『西洋古代の奴隷制――学説と論争』所収・第2版・1974・東京大学出版会)』