ウェルスバハ(読み)うぇるすばは(英語表記)Carl Auer von Welsbach

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ウェルスバハ」の意味・わかりやすい解説

ウェルスバハ
うぇるすばは
Carl Auer von Welsbach
(1858―1929)

オーストリアの化学者。ウィーン工科大学を卒業後、ハイデルベルク大学ブンゼンのもとで希土類元素の研究を始めた。希土類のジジムが2種の類似元素の混合物であることは以前から予測されていたが、1885年、彼は分別結晶法によってその分離に成功し、それらをプラセオジムおよびネオジムと命名した。この研究にブンゼンバーナーによる発光分光分析を用いたことから、照明用の白熱ガスマントルを考案し、その製造工場を建てた。電灯に押され気味だったガス灯事業はこの発明によって一時活気を回復した。このほかオスミウムフィラメント電球やライター用発火合金を発明、1907年にはユルバンGeorges Urbain(1872―1938)とは独立にイッテルビウムルテチウムを分離した。

内田正夫

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改訂新版 世界大百科事典 「ウェルスバハ」の意味・わかりやすい解説

ウェルスバハ
Freiherr von Welsbach
生没年:1858-1929

オーストリアの化学者。ウェルスバハ男爵のことで,本名はアウアーCarl Auer。ウィーンに生まれ,この地の工科大学を卒業。1880-82年ハイデルベルクのR.W.ブンゼンのもとで希土類元素の研究を始め,生涯その研究に没頭した。希土類のジジムは2種の元素の混合物と予想されていたが,85年彼はその分離に成功し,プラセオジムとネオジムと命名した。1907年にはG.ユルバンと独立にイッテルビウムとルテチウムとを分離した。希土類の研究を応用して,トリウムセリウムの酸化物からなる白熱ガスマントルを考案(1885),ガス灯の光度を飛躍的に高めた。また,オスミウムフィラメント電球,セリウムと鉄のライター用発火合金の発明もある。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のウェルスバハの言及

【アウアー合金】より

…オーストリアの化学者ウェルスバハF.von Welsbach(本名アウアーCarl Auer)が1903年に発明した一種の発火合金。セリウムCe50%,ランタンLa,ネオジムNd,プラセオジムPrなど45%からなる。…

【アウアー合金】より

…オーストリアの化学者ウェルスバハF.von Welsbach(本名アウアーCarl Auer)が1903年に発明した一種の発火合金。セリウムCe50%,ランタンLa,ネオジムNd,プラセオジムPrなど45%からなる。…

【イッテルビウム】より

…イッテルビアからはイットリウムをはじめ各種の元素が見いだされたが,さらに1878年スイスのマリニャックJean Charles Galissard de Marignacは新元素を発見し,それをイッテルビウムとした。しかしこれも実は単一の元素ではなく,1905年オーストリアのF.vonウェルスバハとフランスのG.ユルバンがそれぞれ独立に,これが二つの元素からなることを明らかにし,その一つをイッテルビウム,他をルテチウムとした。主要鉱石はガドリン石,ゼノタイムなど。…

【ユルバン】より

…5年間電気会社の研究所長を務めたあと,1906年パリ大学の分析化学の助教授,08年鉱物化学の教授となる。分別結晶法や磁気的・分光学的手法を用いて希土類の厳密な分離法を確立し,07年オーストリアのウェルスバハと独立に,イッテルビウムからルテチウムを分離することに成功した。28年一般化学の教授となったが,その講義はつねに満堂の聴講者を集めたといわれる。…

【ライター】より

…また1823年にはドイツの化学者J.W.デーベライナーが水素発生装置のガラス容器の口に白金海綿(海綿状にした白金)をつけ,これに水素を吹きつけると発火する点火器をつくり,28年にはドイツとイギリスで約2万個が使われていたという。その他,電気を利用するものなど各種の器具が考案されているが,1904年にオーストリアの化学者ウェルスバハによるセリウムと鉄の発火合金の発明で,いわゆるライター石を用いるフリント式ライターが可能になった。当時は燃料にベンジンを用いたが,46年にはフランスで液化石油ガスによるガスライターがつくられ,前者はオイルライターと呼ばれるようになった。…

※「ウェルスバハ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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