Yb.原子番号70の元素.電子配置[Xe]4f 146s2の周期表3族ランタノイド元素.希土類元素イットリウム族の一つ.原子量173.04(3).質量数168(0.13(1)%),170(3.04(15)%),171(14.28(57)%),172(21.83(67)%),173(16.13(27)%),174(31.83(92)%),176(12.76(41)%)の7種の安定同位体と,質量数148~181の放射性同位体が知られている.希土類の分離は困難なため,この元素の発見は,1843年にC.G. Mosanderがガドリン石(旧名Ytterbite)から酸化物テルビアとして見いだした後,次々に新しい元素の酸化物に分割が進み,最終的に1907年にC.F.Auer von Welsbach(ウェルスバッハ)とG. Urbain(ユルバン)が独立に純粋な元素の分離に成功するまでの長年月を要した.その間にイッテルビウムが元素名として使われていたので,混乱を防ぐためにネオイッテルビウムとされたが,1925年にIUPACがイッテルビウムと決定した.
地殻中の存在度2.2 ppm.ガドリン石,ゼノタイムなどの鉱物中に存在し,純金属はYbCl3-NaCl混合融解塩の黒鉛槽中での電解で得られる.密度6.965 g cm-3(立方最密),6.54 g cm-3(体心立方).融点824 ℃,沸点1193 ℃.標準電極電位 Yb3+/Yb-2.22 V.第一イオン化エネルギー6.254 eV.塩基性は希土類中でも弱い.酸化数2,3.普通,三価で化合物をつくるが,電解により Yb2+ も得られる.空気中では Yb2+ は Yb3+ に酸化される.二価の化合物は,イオン半径が Sr2+ と似ているため,硫酸塩の溶解度が小さい.化合物は反磁性である.三価の化合物は,ほかの希土類元素と同様の性質を示す.Yb3+ は無色で常磁性である.光学レンズ用添加剤としての利用のほか,非破壊検査用のγ線源に169Ybが使われている.[CAS 7440-64-4]
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
周期表第3族に属する希土類元素の一つ。原子番号70、元素記号Yb。1794年フィンランドのガドリンはスウェーデン、ストックホルム郊外イッテルビーYtterbyで発見された鉱石から新元素の酸化物を分離したが、これは数種の希土類元素の混合酸化物であった。1878年にスイスのマリニャックJean Charles Galissard de Marignac(1817―1894)が純粋な酸化物を取り出し、1939年にドイツのクレムWilhelm Klemm(1896―1985)らが単体金属を得たが、これには塩化カリウムが不純物として含まれていた。純粋な金属が得られたのは1953年になってからである。酸化数+Ⅱと+Ⅲの化合物があり、+Ⅱは無色、+Ⅲは黄緑ないし緑色を呈する。合金の微量成分に使われ、レーザー光源物質への微量添加物としても使われる。
[岩本振武]
イッテルビウム
元素記号 Yb
原子番号 70
原子量 173.054
融点 824℃
沸点 1427℃
比重 α;6.977
β;6.54
結晶系 α,β;立方
元素存在度 宇宙(Si106個当りの原子数)
0.21(第68位)
地殻 3.0ppm(第41位)
海水 0.00000052mg/L
周期表第ⅢA族に属する希土類元素のうちのランタノイドの一つ。1794年フィンランドのガドリンJohann Gadolinは,スウェーデンのストックホルム近郊イッテルビーYtterby産の鉱物から新しい酸化物を発見し,産地にちなんでイッテルビアとよんだ。イッテルビアからはイットリウムをはじめ各種の元素が見いだされたが,さらに1878年スイスのマリニャックJean Charles Galissard de Marignacは新元素を発見し,それをイッテルビウムとした。しかしこれも実は単一の元素ではなく,1905年オーストリアのF.vonウェルスバハとフランスのG.ユルバンG.Urbainがそれぞれ独立に,これが二つの元素からなることを明らかにし,その一つをイッテルビウム,他をルテチウムとした。主要鉱石はガドリン石,ゼノタイムなど。単体は銀白色の金属。原子半径,比重など,金属の性質に関してはランタノイド中で不規則性を示す。酸化数IIの化合物は緑色,IIIの化合物は無色のものが多い。化合物の性質からはイットリウム族に分類される。
執筆者:中原 勝儼
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