日本大百科全書(ニッポニカ) 「オオツチグモ」の意味・わかりやすい解説
オオツチグモ
おおつちぐも / 大土蜘蛛
節足動物門クモ形綱真正クモ目オオツチグモ科の大形のクモの総称。この科はかつてトリクイグモ科とされていたが、近年変更された。他科の大形のトタテグモ類やジョウゴグモ類も含めてタランチュラtarantulaとよばれることもある。熱帯地方に多く、北・南アメリカ、東南アジア、オーストラリア、アフリカに広く分布し、種類が多い。地中に掘った穴や木の洞にすみ、夜間出て昆虫などをとらえて食べる。口器から出す毒は弱く、ヒトに害を与えることはない。
同科のおもな種類には、トリクイグモAvicularia aviculariaがあり、南アメリカに分布している。体長5センチメートル内外で、鳥類を食べるというので古来この名があり、別にトリトリグモともよばれてきた。しかし、鳥類を食べる事実はなく、体が大きいことから発想された伝説と考えられる。昆虫のほか、ときにトカゲやカエルなども食べる。ルブロンオオツチグモTheraphosa lebrondiは南アメリカに分布する世界最大のクモで、雌の体長9.5センチメートルに達する。ニシキオオツチグモBrachypelma smithiは中央アメリカに分布しており、体長数センチメートル。歩脚の節に赤橙(せきとう)色の部分があり美しい。毒性は弱いが、毛に触れると痛みを感じるので有名である。シロスジオオツチグモMelopoeus albostriatusはカンボジアに多く、土地の住民は油でいためて食用にする。日本にはオオツチグモ類は生息していないが、ときに船荷に紛れ込んで入ることがある。
[八木沼健夫]