美しい(読み)ウツクシイ

デジタル大辞泉 「美しい」の意味・読み・例文・類語

うつくし・い【美しい/愛しい】

[形][文]うつく・し[シク]
色・形・音などの調和がとれていて快く感じられるさま。人の心や態度の好ましく理想的であるさまにもいう。
きれいだ。あでやかだ。うるわしい。「若く―・い女性」「琴の音が―・く響く」
㋑きちんとして感じがよい。「―・い町並み」「―・い文章」
㋒清らかでまじりけがない。好ましい。「―・い友情
妻子など、肉親をいとしく思うさま。また、小さなものを可憐に思うさま。かわいい。いとしい。愛すべきである。
妻子めこ見ればめぐし―・し」〈・八〇〇〉
なにもなにも、小さきものはみな―・し」〈・一五一〉
りっぱである。見事だ。
「かの木の道のたくみの造れる、―・しきうつは物も」〈徒然・二二〉
(連用形を副詞的に用いる)きれいさっぱりとしている。
「―・シウ果テタ」〈日葡
「―・しくおいとま取り、二度ふたたび在所へ来るやうに」〈浄・歌念仏
[補説]本来親しい間柄、特に親子・夫婦などの間のいたわりの愛情を表したが、のちに小さいものへの愛情を主にいうようになり、さらに一般的に心や感覚に喜びを与えるもののようすをいうようになった。
[派生]うつくしげ[形動]うつくしさ[名]
[用法]うつくしい・きれい――「美しい(きれいな)人」「きれいな(美しい)花」のように相通じて用いられるが、現代口頭語としては「きれいだ(です)」が優勢である。「なんてきれいなのでしょう」が普通で、「なんて美しいのでしょう」はやや改まった言い方。◇「美しい」は、「日本の美しい自然」「美しい心」などのように、心を打つ内面的な好ましさについて用いることが多く、「美しい友情」を「きれいな友情」とは普通はいわない。◇「きれい」は、「きれいに掃除する」「きれいに食べる」とかのように、外面的な清潔さ・鮮やかさの意が強い。「きれいな空気」を「美しい空気」とはいわない。◇類義語うるわしい」は、「美しい」に近いが文章語的。感情や、人と人との間柄の美しさなどを表して、「彼女は御機嫌麗しい」「麗しい師弟愛」のように用いられる。
[類語]麗しいきれい秀麗端麗美麗流麗壮麗見目好い見目麗しい端整佳麗艶美艶麗あでやか妖艶豊麗妖美見好い小綺麗美妙典麗ビューティフルピトレスクピクチャレスクラブリービューティープリティー身綺麗美美びびしいきらやか鮮やか華麗華美鮮麗清麗優美美的楚楚そそ清楚せいそ瀟洒しょうしゃあか抜けこざっぱり洒落しゃれ小洒落こじゃれスマートシックドレッシー純美玲瓏れいろう着映えきらびやか洒落しゃれ薄皮のけたよう

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精選版 日本国語大辞典 「美しい」の意味・読み・例文・類語

うるわし・いうるはしい【美・麗】

  1. 〘 形容詞口語形活用 〙
    [ 文語形 ]うるは〘 形容詞シク活用 〙
  2. [ 一 ] 整った感じ。きちんとしていて美しいさまにいう。
    1. 風光や宮殿などの整ったさまをたたえていう。壮麗だ。立派で美しい。
      1. [初出の実例]「大和(やまと)は 国の真秀(まほ)ろば 畳(たた)なづく 青垣 山籠れる 大和し宇留波斯(ウルハシ)」(出典:古事記(712)中・歌謡)
    2. 人の美しく立派なのをほめていう。立派だ。すぐれて美しい。輝くばかり美しい。
      1. [初出の実例]「宇流波斯(ウルハシ)と さ寝しさ寝てば 刈薦(かりこも)の 乱れば乱れ さ寝しさ寝てば」(出典:古事記(712)下・歌謡)
      2. [その他の文献]〔新撰字鏡(898‐901頃)〕
    3. 外面的にきちんとしている美しさをいう。端麗だ。整っていてきれいだ。
      1. [初出の実例]「(てづくり)の姝(ウルワシ)きこと比(たぐひ)无し〈国会図書館本訓釈 妹 于留和之〉」(出典:日本霊異記(810‐824)中)
      2. 「ただ絵に書きたる、ものの姫君のやうにしすゑられて〈略〉うるはしうてものし給へば」(出典:源氏物語(1001‐14頃)若紫)
    4. 乱れたところがなく、完全に整ったさまをいう。
      1. (イ) 完全で理想的だ。端正だ。
        1. [初出の実例]「仏のいとうるはしき心にて説きおき給へる御法にも」(出典:源氏物語(1001‐14頃)蛍)
      2. (ロ) ちゃんとしている。きちんとしている。
        1. [初出の実例]「字を連ね居(す)ゑては花(ウルワシ)からず〈国会図書館本訓釈 花 ウルワシク〉」(出典:日本霊異記(810‐824)中)
      3. (ハ) 態度、服装、心情などが、きちんとしていて立派だ。作法にかなっている。きちょうめんだ。
        1. [初出の実例]「うるはしうものし給ふ人にて、あるべき事はたがへ給はず」(出典:源氏物語(1001‐14頃)玉鬘)
        2. 「凡何事にも有識に、御こころうるはしくおはしますことは」(出典:大鏡(12C前)二)
    5. 人と人との間柄がきちんとしている。仲がいい。
      1. [初出の実例]「天稚彦〈略〉味耜高彦根神と友善(ウルハシ)」(出典:日本書紀(720)神代下(水戸本訓))
      2. 「あくまでもうるわしい師弟の義理人情を描いている」(出典:葉花星宿(1972)〈松本清張〉五)
    6. 本格的であるさまをいう。正式だ。公的だ。
      1. [初出の実例]「昨日はうるはしき御よそひなりしに、今日は殿ばら、君達皆直衣にて参り給へり」(出典:栄花物語(1028‐92頃)音楽)
    7. 正しくまちがいのないさま。本当だ。
      1. [初出の実例]「故左馬頭義朝のうるはしきかうべとて」(出典:平家物語(13C前)一二)
  3. [ 二 ] 柔かな美しさ、ときに魅力的な新鮮さを含む美しいさまにいう。
    1. 容貌や容姿などについて、新鮮な美しさ、うるおいのある美しさをいう。
      1. [初出の実例]「眼の麗して霞の如なるに」(出典:四河入海(17C前)六)
    2. きげんや顔つきなどが)はればれとしている。
      1. [初出の実例]「Vruuaxij(ウルワシイ) cauo(カヲ)」(出典:日葡辞書(1603‐04))
      2. 「御機嫌益うるはしく」(出典:滑稽本・古朽木(1780)五)
    3. 心情や人と人との間柄がしっとりとしていて美しい。心があたたまるような感じである。
      1. [初出の実例]「諸君は之を称讚して麗はしき社会的救済事業と認めて来たでは無いか」(出典:火の柱(1904)〈木下尚江〉一八)

美しいの語誌

( 1 )「うつくし」が愛すべきものをいうのに対し、これは整った美しさをいう。上代には、立派なものとして賞揚する場合に多く用いられ、中古に至ると外見的な立派さ、しかつめらしい、儀式ばった感じに用いられた。
( 2 )[ 二 ]の魅力的なあでやかさを含む美しさを表わすようになったのは、中世末期ごろからか。現在では「うるわしい友情」のように「心」に関して用いられることが多い。

美しいの派生語

うるわし‐げ
  1. 〘 形容動詞ナリ活用 〙

美しいの派生語

うるわし‐さ
  1. 〘 名詞 〙

うつくし・い【美・愛】

  1. 〘 形容詞口語形活用 〙
    [ 文語形 ]うつく〘 形容詞シク活用 〙
  2. ( 古くは、妻、子、孫、老母などの肉親に対するいつくしみをこめた愛情についていったが、次第に意味が広がって、一般に慈愛の心についていう ) かわいい。いとしい。愛らしい。
    1. [初出の実例]「于都倶之枳(ウツクシキ)(あ)が若き子を 置きてか行かむ」(出典:日本書紀(720)斉明四年一〇月・歌謡)
    2. 「父母を 見れば尊し 妻子(めこ)見れば めぐし宇都久志(ウツクシ)」(出典:万葉集(8C後)五・八〇〇)
    3. 「いづれも分かずうつくしく愛(かな)しと思ひきこえ給へり」(出典:源氏物語(1001‐14頃)若菜下)
  3. ( 幼少の者、小さい物などに対して、やや観賞的にいうことが多い ) 様子が、いかにもかわいらしい。愛らしく美しい。可憐である。
    1. [初出の実例]「宇都久志伎(ウツクシキ)小目(をめ)の小竹葉(ささば)霰降り 霜降るとも」(出典:播磨風土記(715頃)賀毛)
    2. 「うつくしきもの、瓜(うり)にかきたる児(ちご)の顔。雀の子のねず鳴きするにをどり来る」(出典:枕草子(10C終)一五一)
  4. ( 美一般を表わし、自然物などにもいう。室町期の「いつくし」に近い ) 美麗である。きれいだ。みごとである。立派だ。
    1. [初出の実例]「西京のそこそこなるいへに、いろこくさきたる木のやうたいうつくしきが侍りしを」(出典:大鏡(12C前)六)
    2. 「うつくしく化けなしてこそ出でにけり」(出典:御伽草子・木幡狐(室町末))
    3. 「女は妖淫(ウツクシ)き肌を白地(あからさま)になし」(出典:浮世草子・好色一代女(1686)四)
  5. ( 不足や欠点、残余や汚れ、心残りなどのないのにいう ) ちゃんとしている。きちんとしている。
    1. (イ) ちゃんとしていて申し分ない。きちんと整っていて結構だ。
      1. [初出の実例]「かくて大学の君、その日のふみ、うつくしう作り給て進士になり給ひぬ」(出典:源氏物語(1001‐14頃)乙女)
      2. 「楽なんどをもうつくしくしらせ給ひ」(出典:今鏡(1170)二)
    2. (ロ) 残余や汚れがなく、きれいさっぱりとしている。
      1. [初出の実例]「ネコガ vtçucuxǔ(ウツクシュウ) クウタ」(出典:日葡辞書(1603‐04))
      2. 「お前は岑さんにうつくしくわかれて」(出典:人情本・英対暖語(1838)三)
  6. 人の行為や態度、また、文章、音色などが好ましい感じである。
    1. [初出の実例]「『こはう物を言はんすりゃ、何処までも腰押し、又美しう頼まんしたらば』『揚巻に逢はしてくれるか』」(出典:歌舞伎・助六廓夜桜(1779))
    2. 「夭死と云ふ事が、何だか一種の美しい事の様な心持がしたし」(出典:枯菊の影(1907)〈寺田寅彦〉)

美しいの語誌

( 1 )上代で優位の立場から目下に抱く肉親的ないし肉体的な愛情であった原義は一貫して残り、平安時代でも身近に愛撫できるような人や物を対象とし、中世でも当初は女性や美女にたとえられる花といった匂いやかな美に限定されており、目上への敬愛やきらびやかで異国的な美をいう「うるはし」とは対照的であった。
( 2 )やがて中世の末頃には、人間以外の自然美や人工美、きらびやかな美にも用いるようになり、明治には抽象的な美、そして美一般を表わすようになった。

美しいの派生語

うつくし‐が・る
  1. 〘 他動詞 ラ行四段活用 〙

美しいの派生語

うつくし‐げ
  1. 〘 形容動詞ナリ活用 〙

美しいの派生語

うつくしげ‐さ
  1. 〘 名詞 〙

美しいの派生語

うつくし‐さ
  1. 〘 名詞 〙

いし・い【美】

  1. 〘 形容詞口語形活用 〙
    [ 文語形 ]〘 形容詞シク活用 〙
  2. よい。好ましい。
    1. [初出の実例]「人の甚だ信仰して威徳ある事あり。其をいしき事と思ふべからず」(出典:栂尾明恵上人遺訓(1238))
    2. 「鞠はいしいものかな。あれほど左衛門督をはしらすることよ」(出典:弁内侍日記(1278頃)建長元年)
  3. 立派だ、みごとだ、けなげだ、神妙だなどと、感心したり、感嘆したりする時にいう。→いしくも
    1. (イ) じょうずだ。巧みである。うまい。
      1. [初出の実例]「馬をよく相して、この御馬はかさ驚きやし侍らんと申せば、いしく相したりとて」(出典:中務内侍(1292頃か))
    2. (ロ) けなげである。殊勝である。神妙である。
      1. [初出の実例]「汝いしくまゐりたり。春日山のおく、しかじかの所也とをしへて」(出典:平治物語(1220頃か)上)
  4. ( 多く女性が用い、のち接頭語「お」を付けて「おいしい」となる ) 美味だ。おいしい。うまい。
    1. [初出の実例]「いしかりしときは夢窓にくらはれて周済(しゅさい)(ばかり)ぞ皿に残れる」(出典:太平記(14C後)二三)
    2. 「むまいといふを、いしい」(出典:女重宝記(元禄五年)(1692)一)
  5. 驚くべき事態である。大変だ。重大だ。
    1. [初出の実例]「あらいしの、のみのおほきさやと云ひけり」(出典:梵舜本沙石集(1283)七)
  6. ( 本来の意味を逆に用いて ) 荒々しい。粗暴である。また、わるい。よくない。
    1. [初出の実例]「いしい悪口(あくこう)仕りて候」(出典:梵舜本沙石集(1283)八)
    2. 「身代もいしくなって、わんぼ一枚にはなったれ共(ども)」(出典:浄瑠璃・加増曾我(1706頃)一)

美しいの派生語

いし‐げ
  1. 〘 形容動詞ナリ活用 〙

美しいの派生語

いし‐さ
  1. 〘 名詞 〙

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