オゾン層の破壊(読み)オゾンそうのはかい

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「オゾン層の破壊」の意味・わかりやすい解説

オゾン層の破壊
オゾンそうのはかい

1970年代初め,アメリカ合衆国の化学者フランク・シャーウッド・ローランドとマリオ・ホセ・モリナが,クロロフルオロカーボンフロン)が紫外線を受けて成層圏で分解すると,大量のオゾン分子を破壊する能力をもつ塩素原子と一酸化塩素を放出するという理論を唱えた。1974年にこの論文が科学誌『ネイチャー』に発表されると,アメリカ政府が調査を開始し,1976年にはアメリカ科学アカデミーも 2人の研究結果を支持した。1978年にはフロンを使用したスプレー噴霧剤がアメリカ,ノルウェースウェーデン,カナダで禁止された。1985年にはイギリスの南極観測隊南極上空のオゾン層に「穴」(オゾンホール)を発見し『ネイチャー』に発表,2人の研究が立証された。オゾンホールの発見が発表される直前,28ヵ国が協議し,オゾン層の保護のためのウィーン条約を採択した。採択会議はオゾン層を破壊する物質の研究のための国際協力を呼びかけ,国連環境計画 UNEPを事務局としてオゾン層を破壊する物質に関するモントリオール議定書草案を作成した。1980年代から 1990年代半ばにかけて南極上空のオゾンホールは拡大を続け,北極上空のオゾン層も南極ほど顕著ではないものの,薄くなった。しかし一連の取り組みが功を奏し,大気中に放出されるオゾン層破壊物質の量はかなり減少しており,2000年以降,南極上空のオゾンホールは減少傾向にある。世界気象機関と UNEPによると,オゾン層が完全に回復するのは北半球中緯度域上空で 2030年代,南極上空で 2060年代と予測されている。

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