オゾンホール(読み)おぞんほーる(英語表記)ozone hole

翻訳|ozone hole

日本大百科全書(ニッポニカ) 「オゾンホール」の意味・わかりやすい解説

オゾンホール
おぞんほーる
ozone hole

南極上空オゾン層オゾンが急速に減少している場所。オゾン層は地上10~50キロメートルの成層圏にあるオゾン濃度の比較的高い層で、地上生物を太陽の紫外線から保護している。この成層圏の大気中に含まれるオゾン総量のみに着目すれば、南極上空で春先9月から10月にかけてオゾン総量の急激な減少がおこり、ぽっかり穴があいたようにオゾンの少ない領域が出現している。この領域をオゾンホールとよんでいる。

 この南極のオゾンホールの現象は、1982年(昭和57)昭和基地で南極観測中に初めて発見されたものである。南極の春先の成層圏オゾン量が前年の春に比べて急減していることが観測されたが、その後、南極各地の観測で上述の事実が確認され、最終的には1985年アメリカの気象衛星ニンバス7号により、春先の成層圏におけるオゾンの急激な減少は、南極全域にわたる現象であることが確認された。

 オゾンホールの原因として、南極の春先に成層圏の気温が零下90℃近くまで下がり、そこに極成層圏雲(おもに氷の微粒子などからなる雲、PSCという)が発生し、その表面でフロンから分離した塩素によってオゾン破壊が促進されるものと考えられている。また、近年北極上空の冬にも、オゾン濃度の減少が観測され、注目を浴びている。1990年代になると、年とともに南極の春のオゾンホールの面積は拡大し、1998年9月上旬から10月にかけての衛星観測では7年連続して大規模なオゾンホール(北アメリカ大陸ほどの大きさ)が観測されている。1999年10月にも同じような大規模オゾンホールが観測されたが、1998年に比べ大きさは少しばかり減少した。これは南極上空の気温が前年に比べ相対的に高く、そのためオゾン層の破壊が少なくなったためと考えられている。年によるオゾンホールの大きさの変動については、南極上空(高度15~20キロメートル)の気温が相対的に低いときには大きくなり、高いときには小さくなる傾向があることがわかってきた。

 オゾン層が破壊されると、地球上に注がれる紫外線の量が増加し、地球環境に深刻な影響を与える。オゾン層は生物を紫外線から保護しているため、オゾンホールの拡大は、皮膚がんの増加、農作物気候などへの影響が考えられる。

[岸保勘三郎]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「オゾンホール」の意味・わかりやすい解説

オゾンホール
ozone hole

南極上空の成層圏オゾン濃度が 9月から 11月にかけて異常に減少する現象。1982年日本の第23次南極越冬隊による昭和基地での観測において,10月頃に上空のオゾン濃度が異常に低いことが発見され,また 1985年にはイギリスのジョゼフ・チャールズ・ファーマンらが 1970年代後半から毎年 10月になるとオゾン全量が減少していることを発表した。その後,アメリカ合衆国の人工衛星『ニンバス』7号によるオゾン観測でも同様の現象が検出され,南極上空にオゾンの穴が開いたような状態から,「オゾンホール」と呼ばれるようになった。フロンなどが大気中へ放出されることが主原因とみられている。南極上空で春季にオゾンホールができるのは,冬季の南極で形成される反時計回りの渦(極渦)によって大気が周囲から孤立して原因物質が蓄積されていき,春になって太陽光があたるようになると急激にオゾンが破壊されるため,と考えられている。(→オゾン層の破壊

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