モリナ(その他表記)Molina, Mario

デジタル大辞泉 「モリナ」の意味・読み・例文・類語

モリナ(Luis de Molina)

[1535~1600]スペインのスコラ学者・イエズス会士。神の恩恵人間自由意志との関係を論じ、今日にまで影響を与えている。

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精選版 日本国語大辞典 「モリナ」の意味・読み・例文・類語

モリナ

  1. ( Luis de Molina ルイス=デ━ ) スペインの神学者イエズス会士。神の恩寵と人間の自由意志との関係を論じた。主著コンコルディア」。(一五三五‐一六〇〇

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「モリナ」の意味・わかりやすい解説

モリナ
Molina, Mario

[生]1943.3.19. メキシコメキシコシティー
[没]2020.10.7. メキシコ,メキシコシティー
マリオ・モリナ。メキシコ生まれのアメリカ合衆国の化学者。フルネーム Mario José Molina。危険な太陽放射から地球を守るオゾン層に関する研究を 1970年代に行ない,1995年 F.シャーウッド・ローランド,ポール・クルッツェンとともにノーベル化学賞(→ノーベル賞)を受賞した。またローランドとともに,工業的に生産されたガスがオゾン層を破壊することを発見,20世紀終わりにクロロフルオロカーボン CFC(通称フロン) の使用制限を求める国際的な運動を展開した(→オゾン層の破壊)。1965年メキシコ国立自治大学を卒業後,1967年ドイツ連邦共和国(西ドイツ)のフライブルク大学で上級学位を取得,母校に戻り 1967~68年准教授を務めた。その後,アメリカのカリフォルニア大学バークリー校で学び,1972年に博士号を取得。そこで 1年間勤務したのち,カリフォルニア大学アーバイン校のローランドと合流した。二人は大気中の汚染物質を調査し,成層圏まで上昇したフロンガス紫外線によって塩素フッ素炭素に分解され,1個の塩素原子が約 10万個のオゾン分子を破壊し,不活性化することを明らかにした。その内容は 1974年にイギリスの科学誌『ネイチャー』に発表され,大きな議論を巻き起こした。1980年代半ばには,南極大陸上空にオゾンホールが発見され,彼らの学説が立証された。1982~89年パサディナにあるカリフォルニア工科大学ジェット推進研究所 JPLに勤務,1989~2004年マサチューセッツ工科大学 MIT教授。2004年カリフォルニア大学サンディエゴ校に移籍。2013年大統領自由勲章受章。

モリナ
Molina, Luis de

[生]1535.9. クエンカ
[没]1600.10.12. マドリード
スペインの神学者。 1553年イエズス会に入り,54~63年コインブラとエボラで哲学と神学を学び,63~67年コインブラで哲学を,68~83年エボラで神学を教えた。主著『自由意志の神与の恩恵との協力』 Concordia liberi arbitrii cum gratiae donis (1588~89) で,のちに恩恵論争を起した神学説 (→モリニズム ) を唱えた。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「モリナ」の意味・わかりやすい解説

モリナ
もりな
Luis de Molina
(1535―1600)

スペイン出身の神学者、イエズス会士。1588年にリスボンで出版した恩寵(おんちょう)と自由意志に関する著作『コンコルディア』Concordiaは神学者の間に永続的な論争を引き起こした。モリナによれば、神は恩寵とともにある人間の自由な行為を誤りなく予知するが、神の予知は人間の意志を決定せず、人間の自由意志の恩寵との協力が存在する。したがって恩寵の効果は神の誤りない予知には帰せられるが、恩寵そのものには帰せられず、人間の行為に対して外的である。人間の自由意志に力点を置くこのモリニズムとよばれる所説は、神の恩寵の普遍性を主張するトミスト(トマス主義者)たちの説と対立したが、またスアレスを含む多くの支持者を得ている。

[宮内久光 2017年12月12日]

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改訂新版 世界大百科事典 「モリナ」の意味・わかりやすい解説

モリナ
Luis de Molina
生没年:1535-1600

スペインの神学者。イエズス会に入り,コインブラ,エボラ,マドリード大学で哲学や神学を教えた。モリナが唱えた〈中間知scientia media〉(被造物の将来における自由な行為について神が有する知識)の説は,恩寵と自由意志に関する論争において,人間の自由を最大限に尊重しつつ,神による将来のできごとの予知や預定,および恩寵の有効性を説明する試みとして大きな影響を及ぼした。
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世界大百科事典(旧版)内のモリナの言及

【恩寵】より

…また半ペラギウス主義は,人間は自由意志によってみずからを恩寵を受けるにふさわしい状態に置きうると説く。このような立場はアウグスティヌスを先導とするキリスト教神学の展開のなかで退けられたが,16世紀以降,恩寵と人間的自由の関係をめぐって激しい論争が起こり,バニェスD.Báñez派が救いへと導く人間の自由な行為は恩寵によって有効に発動させられると説いたのに対して,モリナ派は人間的自由をより積極的に弁護する必要があるとして,神の摂理・預定と人間的自由の両立可能性を説明するための〈中間知〉の理論を提示した。神の絶対的な恩寵や摂理が人間の自由を破壊せず,かえって後者を真の自由たらしめるという真理は人間理性によっては測りがたい神秘であり,これを説明しつくそうとする試みは神に対する真実の信仰とは相いれないといえる。…

※「モリナ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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