モリナ(読み)もりな(英語表記)Luis de Molina

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「モリナ」の意味・わかりやすい解説

モリナ
Molina, Mario

[生]1943.3.19. メキシコ,メキシコシティー
[没]2020.10.7. メキシコ,メキシコシティー
マリオ・モリナ。メキシコ生まれのアメリカ合衆国の化学者。フルネーム Mario José Molina。危険な太陽放射から地球を守るオゾン層に関する研究を 1970年代に行ない,1995年 F.シャーウッド・ローランド,ポール・クルッツェンとともにノーベル化学賞(→ノーベル賞)を受賞した。またローランドとともに,工業的に生産されたガスがオゾン層を破壊することを発見,20世紀終わりにクロロフルオロカーボン CFC(通称フロン) の使用制限を求める国際的な運動を展開した(→オゾン層の破壊)。1965年メキシコ国立自治大学を卒業後,1967年ドイツ連邦共和国(西ドイツ)のフライブルク大学で上級学位を取得,母校に戻り 1967~68年准教授を務めた。その後,アメリカのカリフォルニア大学バークリー校で学び,1972年に博士号を取得。そこで 1年間勤務したのち,カリフォルニア大学アーバイン校のローランドと合流した。二人は大気中の汚染物質を調査し,成層圏まで上昇したフロンガス紫外線によって塩素フッ素炭素に分解され,1個の塩素原子が約 10万個のオゾン分子を破壊し,不活性化することを明らかにした。その内容は 1974年にイギリスの科学誌『ネイチャー』に発表され,大きな議論を巻き起こした。1980年代半ばには,南極大陸上空にオゾンホールが発見され,彼らの学説が立証された。1982~89年パサディナにあるカリフォルニア工科大学ジェット推進研究所 JPLに勤務,1989~2004年マサチューセッツ工科大学 MIT教授。2004年カリフォルニア大学サンディエゴ校に移籍。2013年大統領自由勲章受章。

モリナ
Molina, Luis de

[生]1535.9. クエンカ
[没]1600.10.12. マドリード
スペインの神学者。 1553年イエズス会に入り,54~63年コインブラとエボラ哲学神学を学び,63~67年コインブラで哲学を,68~83年エボラで神学を教えた。主著自由意志の神与の恩恵との協力』 Concordia liberi arbitrii cum gratiae donis (1588~89) で,のちに恩恵論争を起した神学説 (→モリニズム ) を唱えた。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「モリナ」の意味・わかりやすい解説

モリナ
もりな
Luis de Molina
(1535―1600)

スペイン出身の神学者、イエズス会士。1588年にリスボンで出版した恩寵(おんちょう)と自由意志に関する著作『コンコルディア』Concordiaは神学者の間に永続的な論争を引き起こした。モリナによれば、神は恩寵とともにある人間の自由な行為を誤りなく予知するが、神の予知は人間の意志を決定せず、人間の自由意志の恩寵との協力が存在する。したがって恩寵の効果は神の誤りない予知には帰せられるが、恩寵そのものには帰せられず、人間の行為に対して外的である。人間の自由意志に力点を置くこのモリニズムとよばれる所説は、神の恩寵の普遍性を主張するトミスト(トマス主義者)たちの説と対立したが、またスアレスを含む多くの支持者を得ている。

[宮内久光 2017年12月12日]

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