日本大百科全書(ニッポニカ) 「ローランド」の意味・わかりやすい解説
ローランド(F. Sherwood Rowland)
ろーらんど
F. Sherwood Rowland
(1927―2012)
アメリカの化学者。オハイオ州デラウェアに生まれる。1943年16歳で高校を卒業しオハイオ・ウェスレヤン大学に入学。第二次世界大戦中であったため、14か月間の海軍生活を挟み、1948年に卒業。シカゴ大学に進学し、W・リビー(1960年にノーベル化学賞を受賞)のもとで「サイクロトロンで生成された放射性臭素原子の化学的状態」を研究し、1952年に博士号を取得。同年、プリンストン大学講師に就任。1956年カンザス大学助教授、1964年にカリフォルニア大学アーバイン校教授となる。
1970年ころから環境問題に興味をもち始め、フロンの大気に対する影響の研究に着手。1973年にレーザー化学が専門のM・モリーナが研究室に参入して共同研究を始め、1974年に冷媒体などとして用いられるフロンガスが成層圏のオゾン層を破壊している可能性を発表した。この報告を機に、フロンガスの全廃が進んだ。この功績により、モリーナ、P・クルッツェンとともに1995年のノーベル化学賞を受賞した。大気圏におけるメタンガスの濃度上昇が地球温暖化の原因の一つであることも示し、炭水化物やハロゲン化炭素の影響などの研究に取り組んだ。
[馬場錬成 2018年12月13日]
『富永健、巻出義紘、F・S・ローランド著『フロン 地球を蝕む物質』(1990・東京大学出版会)』