日本大百科全書(ニッポニカ) 「おどり字」の意味・わかりやすい解説
おどり字
おどりじ
同じ文字を繰り返して書く必要のある場合、二度目に書く文字(1字または2字以上)のかわりに用いる符号。繰り返し符号、反復符号ともいう。古くは畳字(じょうじ)、重点(かさねてん)などともよんだ。
現在では、(1)々(同の字点。漢字1字の繰り返し)、(2)〻(二の字点。(1)に同じ)、(3)ゝ ゞ(一つ点。仮名1字の繰り返し)、(4) (くの字点。仮名2字以上の繰り返し)、(5)〃(ノノ点。表や帳簿での文字・数字・語句の繰り返し)が用いられるが、実際には(1)と(5)が大部分で、その他はあまり使われなくなっている。おどり字は、中国で古くから〻やゝが用いられており、わが国でもこれに倣い、やがて「仮名」にもその使用が及んだのである。もと、漢字2字以上の反復には二つの形式があって、「幸甚幸甚」を「幸〻甚〻」または「幸甚〻〻」と書いた。これが「平仮名」と「片仮名」に及んで〻がゝとなり、さらに両形式における二つのゝが線で結ばれてできたのが、現在使われている である。
[月本雅幸]
『中田祝夫著『古点本の国語学的研究 総論篇』(1954・講談社)』▽『小林芳規著「表記法の変遷」(『現代作文講座6 文字と表記』所収・1977・明治書院)』