かた‐かな【片仮名】
〘名〙 (「かた」は完全でない、
一部分の意。「かな」は「かりな」の転)
※宇津保(970‐999頃)国譲上「男にてもあらず、女にてもあらず、
あめつちぞ。そのつぎに男手、はなちがきに書きて。〈略〉つぎにかたかな」
② (①の
文字で表記される場合が多いところから) 外来語。外国語。
※行人(1912‐13)〈
夏目漱石〉
塵労「それで貴方に関係のない片仮名
(カタカナ)抔を入れる時は、猶更躊躇しがちになりますが」
[語誌](1)かたかなが
漢文の
訓読から独立して、国語の文章をつづるのにも用いられるようになったのは平安
後期で、それ以来、
漢字まじりかたかな文と
ひらがな文とが並び行なわれることになった。
(2)明治三三年(
一九〇〇)に
小学校令施行規則で現在通用の
字体が定まった。その通
用字体と異なる古い字体のものを、異体がな、古体がななどという(異体がなについては、五十音の各項を参照)。ひらがなが主として万葉がなの
草書体に発したのに対して、かたかなの多くは省筆によるので、これを略体がなとよぶこともある。その
字源は、
点画の簡単な漢字の形をそのままとったもの(チ‐千、ニ‐二、ハ‐八など)、漢字の最初の数画をとったもの(ク‐久、サ‐散、ノ‐乃など)、最後の数画をとったもの(エ‐江、ヌ‐奴、ホ‐保など)、草書体また
行書体にもとづくもの(キ‐幾、シ‐之、ヤ‐也など)がある。「ン」は比較的後にかたかなの列に加えられた。
(3)
発音を示すときにはかたかなを用いることが多く、かたかなを
小文字にして普通の国語にない
音節を表わしたり、特に表音の必要のある場合などに補助的に用いることがある(ちェッ、ふァ、スィなど)。
かた‐かんな【片仮名】
※宇津保(970‐999頃)蔵開中「大の草子に作りて厚さ三寸ばかりにて、一つには例の女の手、〈略〉一つには草くだり同じごと、一つにはかたかんな」
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デジタル大辞泉
「片仮名」の意味・読み・例文・類語
かた‐かんな【片▽仮名】
《「かんな」は「かりな」の音変化》「かたかな」に同じ。
「一には―、一は葦手」〈宇津保・蔵開中〉
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片仮名【かたかな】
音節文字の一つ。日本語を表音的に表記する目的で,万葉仮名の漢字の字画の一部だけを採ったもの(伊がイ,呂がロなど)。また二がニ,八がハのように少画字の全画のこともある。漢字の字画を省くことは古くから行われ,万葉仮名の省画も8世紀初めから例があるが,9世紀に入って漢文の訓点記入が起こると,速書および細書のため省画の万葉仮名を記すことが多くなった。当初はもっぱら訓点記入のため用いられたが,やがて仮名まじり文が作られるようになり,10世紀半ばごろには片仮名だけで和歌を記すことも行われた。やがては片仮名による散文も生じ,院政時代には片仮名は説話集や記録などに多用されるようになった。片仮名の作者を吉備真備とする説は信じられず,僧たちの間で,万葉仮名の簡略化によりできあがってきたものと考えられるが,人により流派により,どの字をどう省画するかは一定しておらず,10世紀中ごろまでは異体字がきわめて多かった。世間に流通するにつれて字体が統一され,12世紀ごろには概して現行に近い字体に統合されてきた。現行の字体が固定したのは1900年小学校令施行規則に基づく。片仮名は漢字とともに用いられるのが原則で,漢字の付属的文字であったものだけに符号的性格が強く,現在でも外来語・擬音語・電報文などに用いられている。明治時代以来,小学校の文字教育では片仮名を先に学習させていたが,第2次大戦後は平仮名を先に教えるようになった。
→関連項目大矢透|漢字|国字
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片仮名
かたかな
かなの一つ。ひらがなと同じく,漢字が,万葉がなというかなとしての用法を経て変化してできたもの。ひらがながその草体化によって生れたのに対し,片仮名はその略体化によって生れた。平安時代に漢文訓読に万葉がなを用いたが,訓を簡潔にすばやく注記する必要から生じた。初め仏徒の間で散発的に発生したものらしく,次第に学系ごとにまとまりをもち,平安後期にかけて社会的にも統一化の方向に進んでいった。 1900年になって字体が1つに定められ,異体がなはほとんど用いられなくなった。今日,擬声語・擬態語,外来語,俗語,発音などの表記におもに用いられているが,これは,訓読の覚え書という発生時の性格を反映している。
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片仮名
かたかな
万葉仮名を手早く書くために漢字の字画を省いて書かれたものから成立した仮名。もともとは漢文訓読の際に補読すべき部分を漢文の字間に書きこんだもので,漢字の草体から成立した平仮名に対し,漢字の一部分=片をとったところに特徴がある。漢文訓読がおもに男性によってなされたために男性専用の文字として平仮名と区別し男手(おとこで)ともいわれた。成立は平安初期の学僧によるものと推定され,かつて創案者とされた吉備真備(きびのまきび)説は否定されている。片仮名の使用は仏書を中心にした漢文訓読に始まるが,説話集などの漢字仮名交り文や各種注釈書の表記に用いられて広がった。字体は書記者によってさまざまであったが,12世紀頃から統一されるようになり,現行の字体の決定は1900年(明治33)の小学校令施行規則である。
出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報
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世界大百科事典内の片仮名の言及
【仮名】より
…日本で漢字を一部分省略するか,極度に草書化するかによって作り出した文字。片仮名と平仮名との2種がある。他に,漢字の意義を考えずにその音のみをそのまま用いるものを万葉仮名という。…
【書体】より
…これは女手または草(そう)とも呼ばれる。片仮名は漢字の音をその楷書体の一部を使って表すもので,伊の偏のイでその音を示すようなものである。これは主に僧侶や学者の間で現在のように一様の字を用いるのでなく,かなり幅広く用いられていたが,明治になって現在の形に統合された。…
【変体仮名】より
…仮名の字体はさまざまなものが用いられてきたが,1900年小学校令施行規則の第1号表によって平仮名,片仮名それぞれが現行の字体に定められた。変体仮名とは,主として平仮名の〈いろは〉47種と〈ん〉について,この表で示された通用の字体とは異なった形のものをいう。…
※「片仮名」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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