お七吉三物(読み)おしちきちさもの

改訂新版 世界大百科事典 「お七吉三物」の意味・わかりやすい解説

お七吉三物 (おしちきちさもの)

人形浄瑠璃歌舞伎狂言の一系統。〈八百屋お七物〉ともいう。1683年(天和3)春に放火の罪で火刑に処せられた江戸本郷の八百屋の娘お七を題材にした作品の総称。寺小姓吉三郎への可憐な恋のために無分別へと走る町娘の純情さに焦点の合わされたものとなっている。西鶴の小説《好色五人女》や歌祭文を通して一般に流布していたこの事件が初めて劇化されたのは,1706年(宝永3)1月大坂嵐三右衛門座の歌舞伎狂言《お七歌祭文》である。そのおり,とくに初世嵐喜世三郎のお七が大当りで,以後彼の定紋がお七の紋に用いられるようになったという。その後,人形浄瑠璃では《八百屋お七》《潤色江戸紫》《伊達娘恋緋鹿子(だてむすめこいのひがのこ)》等が作られ,歌舞伎では《其往昔恋江戸染(そのむかしこいのえどぞめ)》で現行のお七劇の定型が確立した。なお,書替作には《三人吉三廓初買(さんにんきちさくるわのはつがい)》や《吉様参由縁音信(きちさままいるゆかりのおとずれ)》がある。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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