改訂新版 世界大百科事典 「カニクイイヌ」の意味・わかりやすい解説
カニクイイヌ (蟹食犬)
common zorro
crab-eating fox
Dusicyon thous
タヌキとキツネのほぼ中間の体型をした原始的な食肉目イヌ科の哺乳類。コロンビア,ベネズエラ,ブラジルからアルゼンチン北部までの森林と林縁の草原にすむ。体長60~80cm,尾長約30cm,体毛は短く灰褐色,首,背から尾の先端まで正中線を走る顕著な黒線がある。耳介は先がまるく黒色。四肢の下部と吻(ふん)は暗色。体の下面は淡色。キツネに比べ吻が短く,尾が細い。夜行性で1匹または1対で出歩き,ネズミ,トカゲ,カエル,バッタなどの昆虫,カニなどを捕食するほか,イチジク,イチゴ,マンゴー,バナナなどの果実も食べる。ときにカメの卵を掘り出して食べ,アヒル,ニワトリなどの家禽(かきん)を殺すこともある。昼は他の動物の穴に入って休息する。3~4月と8~9月に1腹2~5子を生む。温和でよくなれ,イヌのように飼う原住民があるが,家畜のイヌとは系統的な類縁は少ない。
執筆者:今泉 吉典
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報