ウルシ科の常緑の高木。果実は黄肉桃よりも濃厚な味で,松やにに似た芳香があり,熱帯果実の王女と称される。花は無数に咲くが,結実の少ないことから,宗教上の悟りの困難さを示唆する木ともいう。高さ30mにおよぶ巨木となり,開張性で樹冠の直径が20mを越えるこんもりした樹姿となる。葉は長楕円形で互生する。枝の先端につく複総状花序は数千個の小花よりなるが,全体の1~36%が完全花,その他が雄花となる雑性花である。盛花期には樹冠表面が花穂で覆われ,萌黄色となる。果実は系統により数十gから2kgと変化し,果形は一般的に勾玉(まがたま)状である。果皮の色は成熟すると黄から桃紅色と変異に富むが,果肉は黄色が多い。種子は扁平な紡錘形で1個ある。北インドからマレー半島にわたる地域が原産地と推定されている。現在は全世界の熱帯域で広く栽培されている。単胚性系統の多いインドでは多数の品種があり,多胚性系統の多いフィリピン,フロリダ,西インド諸島では品種数が少ない。多胚性は,珠心細胞が受精の刺激により分裂して母親と同じ遺伝形質の個体を形成する。1種子から2本以上芽生えるのでわかる。繊維の多い果実を生食する際は,ナイフで切り分けて食べるが,輸入されるほどの高級品種は繊維が少なく,扁平な種子を中心に3枚に切り離し,果皮を皿にみたてて縦横に刻み目を入れてスプーンで食べる。ジュース,ジャム,ゼリーなどにも加工できる。未熟果は,酢漬にしたり,塩をつけて生食したり,料理に用いる。また,熟しても酸味が強く,料理専用にされる品種もある。種子は粉にして主食に利用する。材はボートをはじめ各種の軽構造材に用いる。
マンゴー属Mangiferaは東南アジアを中心に40種ほど知られ,ビンゼイM.caesia Jack.やニオイマンゴーM.odorata Griff.など,果樹として栽植される種がある。野生マンゴー属植物でも熟果が食べられるのもあるが,酸味が強く,ウルシかぶれをおこす例もある。
執筆者:岸本 修
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
ウルシ科(APG分類:ウルシ科)マンゴー属の常緑大高木。インド、マレー諸島およびインドシナ半島原産。葉は互生し、3~7センチメートルの葉柄がある。葉身は長披針(ちょうひしん)形で全縁、長さ10~30センチメートル、幅4~10センチメートル、革質で表面は濃緑色で光沢があり、裏面は黄緑色でわずかに光沢がある。同一株に雌花、雄花および両性花をつけ、枝端に長さ10~40センチメートルの円錐(えんすい)花序をつくる。マレーシア、台湾などでは、1~4月に開花する。果実は核果で5~10月に熟し、広卵形で長さ3~25センチメートル、幅1.5~15センチメートルと品種間変異が大きい。果面は黄白色、黄色、黄赤色などで、まれに赤紫色の斑点(はんてん)のあるものがある。果皮は強靭(きょうじん)でやや厚く、熟すと皮が容易にむける。果肉は黄色から橙黄(とうこう)色で多汁である。核は大きく平たくて、厚いものと薄いものがある。内に胚(はい)をもつが、インド系品種の種子は単胚、インドシナ系は多胚である。種皮は木質で表面に繊維があり、長いものは果肉内を走り品質不良となる。冬期15℃以上、生育期24~27℃で、開花期には乾燥する地方でよく生育する。繁殖は共台(ともだい)利用の接木(つぎき)、取木による。品種群として、ムルコバ、アルホンソ、サンダーシャ、カンボジアナ群などがある。
果実は生食のほか、ジュース、缶詰、ゼリー、乾果などにする。幼果は料理に使われ、塩漬け、チャツネ(カレーの薬味)に向く。メキシコから中央アメリカでは幼果に唐辛子粉や塩をつけて食べる。また花や幼葉を料理する地方もある。
[飯塚宗夫 2020年9月17日]
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…コンニャク,キーウィフルーツでも同じ現象がみられるが,原因をシュウ酸カルシウムだけとする説には疑問がある。ウルシ,ハゼノキ,ヌルデ,マンゴーなどウルシ科植物による強いアレルギー性皮膚炎の原因は含有成分のウルシオールにある。イチョウの果肉(種皮)や葉に含まれるギンゴール酸も皮膚炎をおこす。…
※「マンゴー」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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