カニモリガイ (蟹守貝)
Proclava kochi
カニモリガイ科の巻貝。その死殻にヤドカリが入っていて,殻をつけて歩いているのでこの名がある。殻は細くて,先端のほうへとがり,長さ4cm,太さ1.4cmくらい。巻きは多く17階にも及ぶ。殻の表面には小さいつぶつぶのある規則正しく上下に並ぶ肋をめぐらし,また褐色の線や斑がある。殻口は小さくて,下方に短くて開いた水管溝が突き出ている。ふたは卵形で薄く黄色。本州以南の温・熱帯の太平洋~インド洋に広く分布し,潮間帯から水深20mの細砂底に多い。夏,細いひも状の卵塊を産む。多産するので貝細工の材料になる。近縁種として沖縄以南の熱帯地方には大型のオニノツノガイContumax nodulosusを産するが,日本沿岸では殻上に顆粒(かりゆう)が著しく,黒みのあるカヤノミガイClypeomorus humilisや,殻表に強い肋や縞のあるコオロギガイ(コベルトカニモリガイ)Contumax kobeltiが房総半島以南に分布し,潮間帯の岩れき底にふつうに見られる。
執筆者:波部 忠重
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カニモリガイ
かにもりがい / 蟹守貝
creeper
[学] Ochetoclava kochi
軟体動物門腹足綱オニノツノガイ科の巻き貝。本州以南の西太平洋熱帯海域に広く分布し、潮間帯下から水深20メートルぐらいの外洋的環境の細砂底にすむ。殻高40ミリメートル、殻径14ミリメートルほどの高い塔形で、螺層(らそう)は17階あり、各層に顆粒(かりゅう)状の3本の肋(ろく)を巡らし、褐色の螺条と褐色斑(はん)がある。殻口は小さく、後ろに強く曲がった水管溝がある。蓋(ふた)は薄く角質、すこし巻く。夏季に紐(ひも)状の卵塊を砂中に産む。殻はヤドカリが利用するところから、カニモリの名がある。多産するので貝細工の材料にされる。
[奥谷喬司]
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カニモリガイ
Rhinoclava kochi; Koch's vertagus
軟体動物門腹足綱オニノツノガイ科の巻貝。殻高 4cm,殻径 1.4cm。殻は高塔形で殻頂方向へとがる。螺層は 17階で,各層には顆粒状の螺肋をめぐらし,また褐色の細い筋や斑紋がある。殻口は卵形で小さく,短い水管溝がある。この殻がヤドカリのすみかとなることが多いので蟹守貝の名がある。本州以南の西太平洋,インド洋に広く分布し,潮間帯下から水深 20mの砂底にすみ,夏季に細い紐状の卵塊を産む。殻は貝細工に用いられる。
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「カニモリガイ」の意味・わかりやすい解説
カニモリガイ
カニモリガイ科の巻貝。その死殻によくヤドカリがはいっているのでこの名がある。高さ4cm,幅1.4cmと細長い。殻は褐色,淡色のものもある。本州以南インド洋まで広く分布。潮間帯より水深20mの細砂底にすみ,夏,ひも状の卵塊を産む。貝細工に使われる。
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