改訂新版 世界大百科事典 「カプロミス」の意味・わかりやすい解説
カプロミス
Cuban hutia
jutia
一見,ドブネズミに似て大きい齧歯(げつし)目カプロミス科(フチア科)カプロミス属Capromysの哺乳類の総称。フーティアともいう。西インド諸島のキューバ,ジャマイカなどの特産で,デスマレストフーティアなど約4種が知られる。チンチラに近縁と思われる太った齧歯類で,体長30~50cm,尾長15~30cm,体重4~7kg,前・後脚ともふつう5指を備え,体には綿状の下毛と長くて硬い上毛を密生する。体の背面は灰褐色から赤褐色,黒褐色まで種々あり,腹面はふつう淡色。尾は毛を欠き裸出し,種類によっては巻きつく。乳頭は2対で,南アメリカに産するこの科の唯一の種であるヌートリア同様,胸と腹の側面に位置する。胃は齧歯類としては特異で,3室に分かれている。ふつう森林にすみ,おもに樹上で生活する。おもな食物は果実,葉,木の皮であるが,トカゲその他の小動物も食べる。繁殖期は不定,1腹1~3子,妊娠期間は17~18週と長く,子は十分発育して生まれ,生後10日で固形食をとり始める。原住民はイヌを使って狩り,肉を食べる。この科には7属があるが,そのうちハイチなどの3属は,白人が渡来する直前に原住民の狩猟が原因で絶滅し,骨格の一部しか知られていない。残りの4属中の一つは前記のヌートリアで南アメリカの南部に分布し,ほかはドミニカ,ハイチ,バハマなどに分布する。
執筆者:今泉 吉典
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報