からゆきさん

日本大百科全書(ニッポニカ) 「からゆきさん」の意味・わかりやすい解説

からゆきさん

家が貧困のため海外出稼ぎに出た多くの女性たちのこと。アメリカ大陸への出稼ぎは「あめゆきさん」ともよばれた。『天草子守唄(あまくさこもりうた)』の歌詞にある「から(唐=外国)行き」が語源で、女性哀史的存在の「天草女」や「島原女」に代表される。すでに江戸時代から長崎の外国人貿易業者により天草女は妻妾(さいしょう)や売春婦として東南アジアなどに行ったが、明治維新以降アジア太平洋戦争の敗戦までの日本の大陸進出・南洋開発活動に伴い、シベリア満州(中国東北)、朝鮮から台湾、東南アジア、太平洋の各地に至る外地のあちこちに日本人業者による組織的売春業が展開された。「醜業婦」として蔑視(べっし)されつつも家計への仕送りのため密航する者もおり、総計万単位の数のからゆきさんがいた。

[深作光貞・滝澤民夫]

『山崎朋子著『サンダカン八番娼館――底辺女性史序章』(文春文庫)』『森崎和江著『からゆきさん』(1976・朝日新聞社)』『山崎朋子著『あめゆきさんの歌――山田わかの数奇なる生涯』(1978・文芸春秋)』『倉橋正直著『北のからゆきさん』(1989・共栄書房)』『倉橋正直著『からゆきさんの唄』(1990・共栄書房)』『倉橋正直著『島原のからゆきさん――奇僧・広田言証と大師堂』(1993・共栄書房)』

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