2011年に拡張登録された世界遺産(自然遺産)。ヨーロッパの東部、スロバキアとウクライナにまたがるカルパチア山脈の原生ブナ林群は、世界最大のブナの原生地域で、東西185kmにわたって原生ブナ林が存在する。しかもブナ一種の優占林のみならず、カエデ、カシ、裸子植物などの混交林も多い。さらに植物群落に関しては、ウクライナ側だけでも100種類以上が確認され、ウクライナ版レッドリスト記載の動物114種も生息しており、生物多様性維持という観点からも重要な存在である。一方、ドイツの古代ブナ林群は、5つの森林で構成されている。この古代ブナ林群は、陸上生態系の後氷期から現在までの進化の代表例であり、北半球におけるブナ林の拡大のプロセスを理解する上で不可欠な存在である。スロバキアとウクライナの原生ブナ林群29,278haは、すでに2007年に自然遺産として登録されており、今回新たにドイツの古代ブナ林群4,391haが追加された。ドイツ、スロバキア、ウクライナの3ヵ国にまたがるこの遺産は、「カルパチア山地のブナ原生林とドイツの古代ブナ林」と名称が変更となった。◇英名はPrimeval Beech Forests of the Carpathians and the Ancient Beech Forests of Germany