日本大百科全書(ニッポニカ) 「カルボニル化」の意味・わかりやすい解説
カルボニル化
かるぼにるか
carbonylation
一酸化炭素(CO)を作用させてカルボニル化合物を生成させる反応をいう。とくに特定の反応をさすのではなく、多くの反応がカルボニル化とよばれている。代表的なカルボニル化を次に示す。
(1)芳香族ハロゲン化物にパラジウムなどの遷移金属触媒と塩基を加えてクロスカップリング(交差カップリングともいう)させるときに、一酸化炭素を加えておくとカルボニル基の挿入がおこって、エステルやアルデヒドができる。これらのカルボニル挿入反応もカルボニル化の一つである。
Ar-I+ROH + CO → Ar-COOR'(アルコキシカルボニル化)
Ar-I+H2 + CO → Ar-CHO(ホルミル化)
(2)コバルトおよびロジウム化合物を触媒として、アルケンに一酸化炭素と水素を反応させて炭素数が一つ多いアルデヒドにすることができる。この反応はヒドロホルミル化、あるいはオキソ法とよばれ、各種アルデヒドの工業的な製法の一つである。この反応もカルボニル化である。
RCH=CH2+H2 + CO
→ RCH2CH2-CHO(ヒドロホルミル化)
アセチレンと一酸化炭素との反応によりアクリル酸誘導体を合成するカルボニル化反応は、レッペ反応の一種で、石油化学の発展以前には工業的合成法としてよく使われていた。
(3)老化に伴うタンパク質の変化の一つに、タンパク質のカルボニル化がある。カルボニル化は細胞・組織内で発生する活性酸素種がリジン、アルギニン、プロリンなどのアミノ酸残基を酸化してカルボニル化タンパク質に変える反応で、生成したカルボニル化タンパク質は安定であることから酸化ストレスのマーカーとして使われている。
[廣田 穰]