オレフィンに一酸化炭素と水素を作用させてアルデヒドを合成する反応をいう。オレフィンのヒドロホルミル化hydroformylationとも呼ばれる。
この反応の原理は1938年にドイツのレーレンOtto Roelenによって発見され,45年に最初の工業装置が建設されたが,いまでも重要な有機合成工業プロセスである。その応用例はプロピレンからの2-エチルヘキサノールの合成である。まずプロピレンをオキソ法によってn-ブチルアルデヒドに変え,そのアルドール縮合反応によって2-エチルヘキセナールを得てのち,さらに水素化反応を行う。すなわち
2-エチルヘキサノールは有用な高級アルコールであり,たとえば無水フタル酸との反応でフタル酸ジ-2-エチルヘキシルが得られるが,この化合物はDOP(フタル酸ジオクチルdioctyl phthalateの略称)として知られる優れた可塑剤であり,プラスチック工業には欠かすことができない。
オキソ反応は均一系触媒系を用いる高温・高圧の反応であり,初期にはコバルト触媒が用いられたが,ロジウムやルテニウムの化合物も含めて,触媒の改良が進み,反応条件はしだいに温和になり,生成物の分布も改善されて今日に至っている。コバルト触媒を用いる反応例では,コバルトを金属粉末,水酸化物,または塩の形で用い,プロピレンとそのオキソ合成反応生成物から成る液相に加え,水素と一酸化炭素を140~180℃,250~300気圧で作用させる。コバルト触媒はヒドリドテトラカルボニルコバルトHCo(CO)4の形で活性作用を示すものと考えられている。反応生成物はブチルアルデヒド約80重量%,ブタノールとギ酸ブチル10~14重量%,その他である。ブチルアルデヒドの内容はn-ブチルアルデヒドとイソブチルアルデヒドの割合が3対1から4対1の範囲にある。イソブチルアルデヒドは用途に乏しいので,その生成比を減らす目的で触媒の改良が行われた。その例の一つはロジウム-トリフェニルホスフィン触媒(1975年)であり,n-とイソブチルアルデヒドの生成比が8~16対1にまで向上した。しかも反応条件が90~120℃,7~25気圧と大幅に緩和され,また,触媒の安定性が高く,アルコールやアセタールがほとんど生成しないという利点もある。
執筆者:冨永 博夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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