翻訳|arginine
α(アルファ)-アミノ酸の一つ。略号はArgまたはR。塩基性アミノ酸。シュルツェErnst August Schulze(1840―1912)とシュタイガーE. Steigerにより1886年に白化させたルピナス(豆)の芽から単離された。その硝酸塩が銀argentのように白かったのでarginineと名づけられた。L-アルギニンはタンパク質の構成成分として広く存在する。とくに魚類の精子(白子(しらこ))に存在するタンパク質プロタミンに属する、クルペイン(ニシン)、サルミン(サケ)などでは構成アミノ酸の約70%がアルギニンである。植物種子中には遊離状態でも存在する。アルギニンはそのグアニジノ基のために強塩基性を示す。アルカリ性でα-ナフトールと次亜塩素酸を作用させると特有の赤色を呈し、定量できる(坂口反応)。生体内の代謝経路は、尿素回路(オルニチン回路)の構成成分で、シトルリンとアスパラギン酸から生成され、アルギナーゼの働きによって尿素とオルニチンに分解される。アンモニアや大量のアミノ酸の毒作用に対して保護する働きがある。脳にはアルギナーゼが存在し、γ(ガンマ)-グアニジノ酪酸の前駆体であるアルギニンの量を調節している。分子量174.21。分解点238℃。水に溶ける。
[降旗千恵]
アルギニンは栄養上、必須(ひっす)アミノ酸と非必須アミノ酸の中間に位置し、幼動物の成長には不可欠で、準必須アミノ酸ともよばれる。食品タンパク質としては動物性タンパク質、とくに魚類の白子に多く、また穀類タンパク質にもかなり含まれていて、栄養的に不足することはない。なお、生体内では尿素回路のほか、グリシンと結合してグリコシアミン(グアニジノ酢酸)となり、活性メチオニンからメチル基を受けてクレアチンを生成する。
[宮崎基嘉]
『大柳善彦著『NOと医学――一酸化窒素の生理作用と薬理作用』(1993・共立出版)』▽『船山信次著『アルカロイド――毒と薬の宝庫』(1998・共立出版)』▽『谷口直之・鈴木敬一郎編『イラスト医学&サイエンスシリーズ NOの生理作用と疾患』(1999・羊土社)』▽『古賀弘著『超アミノ酸健康革命――21世紀のサプリメント「アルギニン」のすべて』(2002・今日の話題社)』
2-amino-5-guanidinovaleric acid.C6H14N4O2(174.21).略号ArgまたはR.塩基性α-アミノ酸.タンパク質構成アミノ酸として,または遊離あるいはリン酸エステルの形で動物,植物界に広く分布し,とくに魚の白子のタンパク質の全窒素の80% を占めている.ゼラチン加水分解物からイオン交換,フラビアン酸塩として沈殿させて分離される.発酵法で得られるL-オルニチンにシアナミドを作用させて合成される.L-アルギニンはプリズム形(二水和物),単斜晶系板状晶(アルコール).融点244 ℃(分解).+12.5°(水).+11.8°(0.5 mol L-1 水酸化ナトリウム).pKa1 2.18,pKa2 9.09,pKa3 13.2.グアニジノ基をもち,アルギナーゼの作用でオルニチンに,アルギニン脱炭酸酵素の作用でアグマチンにかわる.α-ナフトールと次亜臭素酸による坂口反応により赤色を呈し,定性,定量に用いられる.ヒトの栄養上は必須アミノ酸ではないが,発育の盛んな幼児には必要で,無脊椎動物の筋肉中でアルギニンリン酸エステルはエネルギーの貯蔵に役立っている.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
…尿素生成反応を触媒する酵素。ヒトをはじめ哺乳類,両生類の肝臓,腎臓などに含まれ,尿素回路の一員として働き,アルギニンを分解してオルニチンと尿素を生成する。尿素を窒素代謝の最終産物として排出するこれらの動物以外にも硬骨魚類や植物,酵母,カビ類にも含まれる。…
※「アルギニン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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