改訂新版 世界大百科事典 「カワゴケ」の意味・わかりやすい解説
カワゴケ
Fontinalis hypnoides Hartm.
カワゴケ科に属する大型の水生蘚類。北半球に広く分布し,日本では北海道と本州の冷たい流水中や池の中に生育し,水底の岩上に大きな群落をつくる。植物体は大きく黒褐色,葉はややまばらに3列につき,狭卵形で中央脈を欠く。蒴(さく)は円柱状で,蒴歯は複列で内蒴歯は紅色の美しい網目をなす。本種に近縁のクロカワゴケF.antipyretica Hedw.は同様な環境に生育するが,葉が中央で折れて竜骨をなす点で異なる。クロカワゴケも北半球に広く分布し,植物体の長さが1mに達することもあり,コケ植物の中で最大のものの一つである。北欧では古来,このコケが火を避けると信じられ,木造の家を建てるとき,柱や板のすきまの詰物として利用されてきた。“解熱”を意味するantipyreticaという学名は,この習俗に由来する。英名もincombustible mossまたはbrook mossという。
執筆者:北川 尚史
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報