日本大百科全書(ニッポニカ) 「ガイジュセク」の意味・わかりやすい解説
ガイジュセク
がいじゅせく
Daniel Carleton Gajdusek
(1923―2008)
アメリカのウイルス学者。ニューヨーク州ヨンカーズに生まれる。ロチェスター大学卒業後、ハーバード大学医学部で学び、1946年に博士号を取得した。ボストン小児病院に勤務ののち、カリフォルニア工科大学、コロンビア大学、ハーバード大学で研究を行った。1951年に徴兵され、陸軍医療学校でウイルス学を研究、その後、テヘランのパスツール研究所、メルボルンのウォルター・アンド・エリザ・ホール医学研究所を経て、1958年アメリカに戻り、国立衛生研究所(NIH:National Institutes of Health)の所員となった。
1950年代に、ニューギニアの民族フォレにみられる原因不明の慢性神経疾患「クールー病」について研究を開始した。フォレとともに生活し、この病気が、フォレが死者を弔うためにその脳の一部を食する習慣に原因することをつきとめ、さらに詳しく研究し、長い潜伏期間をもつスローウイルスの感染によることを証明した。1976年「感染症の起源と伝播(でんぱ)の新しい機構に関する発見」に対してブランバーグとともにノーベル医学生理学賞が与えられた。彼は賞金によってフォレの教育基金を設立した。なお、その後の研究で病原のスローウイルスは、ウイルスではなくプリオン(感染性タンパク粒子)であるとの見解が有力となっている。
[編集部]