改訂新版 世界大百科事典 「ガウゼの法則」の意味・わかりやすい解説
ガウゼの法則 (ガウゼのほうそく)
Gause's axiom
食物や生活空間などの生活に必須な要求が似かよった近縁な2種は同一場所で共存することがむずかしく,種間競争によって最終的には必ず一方が他方によってそこから排除されてしまう,という仮説。このような考えはC.ダーウィンの自然淘汰説の主要な柱でもあったため,多くの研究者によって古くよりいろいろな形で主張されてきた。数式モデルによってこのような考えに理論的な考察を加えたのはボルテラV.Volterra(1926)とロトカA.J.Lotka(1932)が最初であるが,1934年にソビエトのガウゼG.F.Gauseが酵母菌とゾウリムシを用いて初めて詳細な実験的研究を行い,種間競争によって一方が他方を駆逐してしまうという現象を明確に実証したところから,後にこのような考えがガウゼの法則(仮説)と呼ばれるようになった。この呼び方には異論もあり,競争的排除則あるいは競争的置換則と呼ばれることもある。この仮説はきわめて単純化された実験条件下でのみ成り立つもので,複雑な自然条件下で生活する生物には当てはまらないという批判もあるが,数式モデルも含めたこの考えが近年の個体群生態学の発展に果たした役割はたいへん大きい。
執筆者:宮下 和喜
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報