改訂新版 世界大百科事典 「キヌザル」の意味・わかりやすい解説
キヌザル
marmoset
霊長目キヌザル科Callithricidaeに属する小型の新世界ザルの総称。マーモセットとも呼ばれる。マーモセットとは古いフランス語の〈小さくて変わったもの〉を意味する語によるという。また,キヌザルの名はマーモセット属の学名Callithrixが絹毛を意味するところからきている。キヌザル科の分類は2~5属,20~30種と学者によってさまざまである。マーモセット属,タマリン属Saguinus,ライオンタマリン属Leontopithecusなどが含まれ,ゲルディモンキーを亜科のレベルで含めることもある。
キヌザルの仲間は一般に小型で頭胴長20cmくらいのものが多く,外見上あまりサルらしくない。手足のほとんどのつめは長く湾曲したかぎづめで,平づめは足の親指だけに見られる。歯式はゲルディモンキーがであるほかはすべてである。マーモセットとタマリンは,前歯部の特徴によって区別される。マーモセットの切歯は長く,犬歯と同じくらいの長さをもっているのに対し,タマリンの切歯は短い。身体的特徴としては,マーモセットは耳に長い毛ぶさをもっていたり,尾に縞模様をもつ種が多いのに対して,タマリンには耳の毛ぶさがなく,一様に黒っぽい尾をもつ種が多い。
分布域は,アマゾン川流域を中心に,ブラジル,ギアナ,コロンビア,パナマ地峡部に広がっている。一般に小さな集団をつくり,1頭ずつのおとなの雄と雌とその子どもたちからなる例が多いようである。1歳半足らずで性的成熟に達し,妊娠期間は140~145日で,1産1~2頭の子どもを生む。オマキザル科の種に比べて昆虫や小動物に食生活を依存する傾向が強いが,果実や種子なども食べる雑食性である。また,多くの種にマーキング行動が見られ,各集団はなわばりをもっている。
執筆者:早木 仁成
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報