イギリスの海賊。本名ウィリアム・キッドWilliam Kidd。スコットランドに生まれる。船乗りとなって植民地北アメリカに渡る。1690年にはニューヨークを根拠地として船長兼船主となる。90-95年私掠船を指揮して対フランス戦争に参加。当時北アメリカ東海岸はアフリカ,インド洋方面まで出向く海賊の溜り場となっていた。その鎮圧の必要を感じていたイギリス本国政府に雇われ,96年〈冒険号〉を率いてロンドンを出航。途中ニューヨークで船員を補充,マダガスカル島を経てインド洋に入る。獲物がなく船員の不満が高まりついに一船員を殺す。殺人罪とともに,私掠船としての報酬の見込みもないのでやむなく海賊に転向,98年アルメニア船を襲い,没収後みずからの船隊に加え,さらに他船を拿捕(だほ)する。翌年西インドに帰帆するが,航海中の殺人および海賊行為のかどで,1700年罪人としてニューヨークからロンドンに護送され,翌年絞首刑。死後彼が隠したという宝の噂が世間を賑わせ,そのありかが関心を呼んだ。20世紀初め,日本の南西諸島もこれに擬せられた。
執筆者:越智 武臣
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