アメリカの詩人エズラ・パウンドの連作長編詩。ダンテに倣って現代の『神曲』を書くことを意図して『16編の草稿』(1925)から着手。ホメロスの叙事詩の主人公オデュッセウスに擬して地獄巡りから始め、古代ギリシア、ルネサンス期イタリア、建国期のアメリカ、および現代のファシスト政権下のイタリアなど、各時代の文化を訪ねて放浪する精神の一大叙事詩である。孔子(こうし)の中庸の精神に範を仰ぎ、利子制度に反対して、地上の理想政治を追求したが、ムッソリーニの失脚によって『ピサン・キャントーズ』(1948)で夢は挫折(ざせつ)した。その後はダンテの『天国編』に比すべき『玉座編』(1959)、『草稿と断片』(1970)を出して、未完に終わった。イメージと挿話を積み重ねてゆくモンタージュ的手法は、現代詩に新しい可能性を開き、T・S・エリオットやW・C・ウィリアムズらに影響を与えた。
[新倉俊一]
『新倉俊一訳『エズラ・パウンド詩集』(1976・角川書店)』
敵を欺くために、自分の身や味方を苦しめてまで行うはかりごと。また、苦しまぎれに考え出した手立て。苦肉の謀はかりごと。「苦肉の策を講じる」...