酢酸エステル(読み)さくさんえすてる(英語表記)acetic ester

日本大百科全書(ニッポニカ) 「酢酸エステル」の意味・わかりやすい解説

酢酸エステル
さくさんえすてる
acetic ester

酢酸とアルコール(あるいはフェノール)が、1分子の水がとれて縮合した形の化合物の総称アセテートアセタートともいう。一般式CH3COORで表される。代表的なカルボン酸エステルである酢酸エチルなどもこれに属する。一般的製法としては、硫酸、リン酸などの酸を触媒として酢酸とアルコールとを反応させる方法があり、工業的にも利用されている。この方法ではフェノールのエステルは得られないので、フェノールの酢酸エステルを合成する場合には、塩化アセチルや無水酢酸をフェノールと反応させる。

 一般に芳香をもつ無色液体。果実などに含まれているものも多い。

 工業的にもっとも重要な酢酸エステルは酢酸ビニルで、エチレンと酸素と酢酸をパラジウム触媒を用いて気相で反応させてつくっている。このほかでは、酢酸エチルや酢酸ブチルの生産量が多く、溶剤などに使われている。多価アルコールのエステルとしてとくに重要なのはセルロースの酢酸エステルで、アセチルセルロースともよばれ、プラスチック、ラッカー、不燃性フィルムなどの広い用途をもっている。

[廣田 穰]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「酢酸エステル」の意味・わかりやすい解説

酢酸エステル
さくさんエステル
acetic ester

酢酸と種々のアルコールから生成され,CH3COOR で表わされる化合物の総称。製法としては,無機酸の存在下での酢酸とアルコールとの反応,無機酸のエステルと酢酸塩との複分解,塩化アセチルあるいは無水酢酸とアルコールとの反応がある。アルキルエステルは一般に芳香をもつ無色,中性の液体で,有機合成試薬,人工果実香料,有機溶剤として用いられる。加水分解すると,もとの酢酸と,対応するアルコールとに分解する。それぞれの酸,アルコールが水に可溶であっても,エステル化によってできたものは水に溶けにくいか,高級なものは水に不溶である。一般に有機溶媒によく溶ける。

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